抑制型C型レクチン受容体Clec4a4発現の免疫細胞をマウス小腸で探索、発現/非発現好酸球を発見
信州大学は9月5日、マウスの小腸には特殊な好酸球がいることを発見したと発表した。この研究は、同大医学部内科学第二教室・消化器内科の城下智准教授、ワシントン大学医学部セントルイス・免疫学(Marco Colonna教授)のWei-Le Wang博士研究員、東北大学大学院医学系研究科感染制御インテリジェンスネットワーク寄附講座の笠松純講師の研究グループによるもの。研究成果は、「Proceedings of the National Academy of Sciences」に掲載されている。
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好酸球は寄生虫感染やアレルギー反応で重要な役割を担う免疫細胞。小腸には多くの好酸球が存在しているが、その役割についてはいまだ不明な点が多いのが現状だ。城下准教授は、免疫系活性化の制御に重要な役割を果たしていることが報告されている抑制型C型レクチン受容体Clec4a4を発現する免疫細胞の探索から、マウスの小腸にはClec4a4を発現する好酸球(Clec4a4+好酸球)と発現しない好酸球(Clec4a-好酸球)が存在することを発見した。
Clec4a4+好酸球、分化に芳香族炭化水素受容体が必要、加齢に伴い増加
研究では、この2種類の好酸球の特徴を調べるために、マイクロアレイ解析によって網羅的に遺伝子発現を比較。Clec4a4+好酸球は免疫抑制に関わる遺伝子群の発現が高いのに対し、Clec4a4-好酸球は炎症応答に関わる遺伝子群の発現が高いことを明らかにした。これらのことより、マウスの小腸には遺伝子発現パターンが異なる2種類の好酸球が存在することがわかった。
さらに、マイクロアレイ解析の結果を元に、Clec4a4+好酸球が芳香族炭化水素受容体を高発現していることがわかった。芳香族炭化水素受容体は、ダイオキシンや腸内細菌の代謝産物などと結合して活性化し、腸管の免疫細胞の分化に重要な転写調節因子だ。そこで、芳香族炭化水素受容体がClec4a4+好酸球に及ぼす影響を調べるために、この受容体を欠損したマウス(Ahr遺伝子欠損マウス)の小腸の好酸球を解析。その結果、Clec4a4+好酸球が完全に消失していることを発見。反対に、野生型マウスに芳香族炭化水素受容体のリガンドであるインドール-3-カルビノールを経口投与したところ、Clec4a4+好酸球が増加することも明らかにした。このことから、Clec4a4+好酸球の分化には芳香族炭化水素受容体が必要であることがわかった。
また、生後間もないマウスと成体のマウスを比較すると、成体のマウスでClec4a4+好酸球が増加していた。このことから、この好酸球は加齢に伴い増加することも明らかにした。
Clec4a4+好酸球欠損マウスでは寄生虫の排除が促進、免疫抑制型と示唆
Clec4a4+好酸球の役割を調べるために、好酸球特異的にAhr遺伝子を欠損させたClec4a4+好酸球欠損マウスを作製。このマウスを使って腸管寄生線虫(Nippostrongylus brasiliensis)感染実験を行い、Clec4a4+好酸球欠損マウスでは寄生虫の排除が促進していることを発見した。これらのことから、Clec4a4+好酸球は寄生虫に対する免疫応答を抑制していることが示唆された。
食物アレルギー発症マウスでClec4a4-好酸球増、免疫促進型と示唆
一方で、食物アレルギーを発症したマウスを用いて小腸の好酸球を調べたところ、Clec4a4-好酸球が増加していた。以上のことより、小腸には免疫抑制型Clec4a4+好酸球と免疫促進型Clec4a4-好酸球が存在していることがわかった。
食物アレルギー新規治療法開発へ期待
先進国では、国民の3人に1人が何らかのアレルギーを持つとされている。また、食物アレルギーは加齢とともに発症率が低下することも知られている。今回発見した免疫抑制型Clec4a4+好酸球は加齢依存的に増加することから、加齢に伴う食物アレルギーの発症率低下に関与している可能性がある。また、食物アレルギーの治療は食事療法が中心であり、同研究は免疫抑制型Clec4a4+好酸球に着目した新しい食物アレルギーの治療法開発につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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・信州大学 プレスリリース