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難治性の悪性リンパ腫「ATLL」、NK細胞免疫からの耐性機序を解明-北大ほか

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2022年09月12日 AM09:47

ATLL細胞はNK細胞免疫を回避する能力を有しているのか?

北海道大学は9月8日、難治性T細胞性悪性リンパ腫「成人T細胞性白血病/リンパ腫(Adult T-cell leukemia/lymphoma; ATLL)」のNK細胞免疫からの耐性機序を解明したと発表した。この研究は、同大大学院医学院の千葉雅尋医員と同大学院医学研究院の中川雅夫特任准教授らの研究グループと、同大大学院薬学研究院(前仲勝実教授)との共同研究によるもの。研究成果は、「Blood」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ATLLは、human T-cell leukemia virus type1(HTLV-1)感染者の一部に発症する悪性リンパ腫で、既存の化学療法に対する効果が乏しい難治性の疾患だ。次世代シークエンスを用いたゲノム異常の網羅的解析によって、ATLL細胞はT細胞性免疫に関わる遺伝子変異を高頻度に有することが判明している。

一方、生体内の正常NK細胞は、異常が起こったこれらの細胞を攻撃できることが知られている。このため、ATLL細胞はNK細胞免疫を回避する能力を有していることが予想されるが、その機序については解析が進んでいなかった。

ATLLのNK細胞免疫に最も重要な役割を担っている遺伝子を機能的に探索

研究グループは、ATLLにおけるNK細胞免疫に重要な働きを持つ遺伝子を同定するため、ゲノム編集技術CRISPR-Cas9をATLL細胞株に用いることで、一度に約2万種類の遺伝子を網羅的にノックアウトさせ、ゲノムワイドな機能的スクリーニングを施行した。

具体的には、1万9,114種類の遺伝子に対する単鎖ガイドRNA(sgRNA)をATLLの細胞株に導入。このATLLの細胞株にNK細胞株を加えたものと加えていないものを作成し、24~ 48時間培養した。培養後にATLLの細胞株のゲノムDNAを抽出し、ゲノムDNA上のsgRNA配列をPCRで増幅、次世代シークエンサーで検出した。計測されたsgRNA数からNK細胞株を加えていないものとNK細胞株を加えたものとの比を計算し、どの遺伝子がATLLに対するNK細胞免疫に機能的に重要な役割を担っているかを検討した。

ATLL細胞はSTAT5Bを介してCD48の発現量を低下させ、NK細胞免疫から逃避

上記スクリーニングから、8の発現が減少した場合にATLL細胞はNK細胞免疫から逃れることができることを見出した。8を欠損したATLL細胞はNK細胞株のみならず、健常人のNK細胞、さらにはATLL患者のNK細胞に対しても耐性を示した。さらに、正常なリンパ球と比較して、ATLL細胞ではCD48の発現量が有意に低下したことも明らかにした。8発現が低下する機序を検討したところ、ATLL細胞はSTAT5B(Signal Transducers and Activator of Transcription 5B)の機能弱化に従い、8の発現を低下させることを解明した。このことから、ATLL細胞はSTAT5Bを介してCD48の発現量を低下させ、NK細胞免疫から逃避していることを明らかにした。

一方、ATLL以外のT細胞性悪性リンパ腫病型においてもCD48の発現量が低下しており、一部のT細胞性の悪性リンパ腫病型においては、CD48の発現量と予後が関連していることも示した。

ATLLを含むT細胞性悪性リンパ腫の「免疫療法の治療効果予測」に期待

今回の研究により、CRISPR-Cas9ライブラリースクリーニングを用いてATLL細胞がCD48発現を低下させることで、NK細胞免疫から逃避できることが明らかにされた。また、ATLL以外のT細胞性の悪性リンパ腫においても、CD48発現低下がNK細胞免疫に重要である可能性も見出した。

免疫チェックポイント阻害薬などを用いた免疫療法はさまざまながんに用いられているが、実際に治療が奏功する方は一部だ。そのため、この免疫療法が有効であるかを事前に判断することが求められている。現在、T細胞性の悪性リンパ腫においても、免疫チェックポイント阻害薬などの免疫療法の開発が進められており、それらによる免疫療法による臨床試験が、T細胞性の悪性リンパ種においても行われている。

「T細胞性の悪性リンパ腫におけるCD48の発現を調べることで、これらの免疫療法の効果が予測できる可能性があり、臨床応用への展開が期待される」と、研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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