TKI継続・中止CML患者と健常者で、ワクチン2回接種前後の抗体価の推移を解析
東京医科大学は9月7日、前向き観察研究を実施し、慢性骨髄性白血病(CML)患者におけるチロシンキナーゼ阻害薬(TKI)が新型コロナウイルスワクチン(SARS-CoV-2ワクチン)接種後の抗SARS-CoV-2スパイクタンパク抗体(以下、S-IgG)獲得に与える影響を解析した結果を発表した。この研究は、同大血液内科学分野の後藤明彦主任教授、片桐誠一朗助教を中心とした研究グループによるもの。研究成果は、「Vaccines」に掲載されている。
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COVID-19が世界的に流行している現在、COVID-19発症および重症化予防のためSARSCoV-2ワクチンが広く普及してきている。しかし、造血器腫瘍患者では疾患による影響、抗腫瘍薬や免疫抑制薬の使用によりワクチンの効果が低い可能性が懸念されている。CMLはTKIにより長期生存が期待されるが、多くの患者では治療の継続が必要だ。治療中のCML患者に対するSARS-CoV-2ワクチンの長期的な効果はこれまで明らかになっていなかった。
今回の研究では、東京医科大学病院外来通院しTKIを継続もしくは中止しているCML患者と健常者ボランティアを対象に2回のSARS-CoV-2ワクチン(BNT162b2ワクチン:ファイザー製)接種前後のS-IgG値の推移を解析。S-IgG値は、BNT162b2ワクチン接種前、2回目接種後1~5週間後(T1)、約半年後(T2)に測定した。
約半年後時点、3群間でS-IgG抗体価に有意差なし
研究の結果、T1時点では健常者、TKI継続例(CML-TKI)、TKI中止例(CML-TFR)のいずれもSIgG抗体価の上昇が見られ、各群の間で有意な差は認めなかった。CML-TKI群では投与されているTKIの種類でS-IgG抗体価上昇に有意差はなかった。
続いてT2時点では、全ての群でT1時点と比較して有意にS-IgG抗体価が低下。しかし3群間ではS-IgG抗体価に有意差はなかった。
TKI投与の有無・種類に関わらず、2回ワクチン接種による抗体獲得・維持は健常者と同等
今回の研究では、TKI投与の有無・種類に関わらず、CML患者では2回のBNT162b2ワクチン接種によるS-IgG獲得および維持は健常者と同等の効果が得られていたことが示され、TKI治療中のCML患者に対しても複数回のSARS-CoV-2ワクチン接種が健常者と同等に有効であることが示唆された。この結果は、コロナ禍におけるCML患者の治療継続に大きく役立つと予想される、と研究グループは述べている。
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