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「Jリーグ声出し応援導入試合」の感染リスク、2022年6~8月調査の結果報告-産総研

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2022年09月08日 AM10:51

12試合で声出し応援エリアを中心に調査を実施

(産総研)は9月5日、Jリーグの観客の新型コロナウイルス感染リスクや対策効果の評価をするため、2022年6~8月にかけて行われた「Jリーグの声出し応援段階的導入試合」12試合の調査結果を発表した。この研究は、同研究所新型コロナウイルス感染リスク計測評価研究ラボ(以下「研究ラボ」という)の保高徹生ラボ長、大西正輝副ラボ長、坂東宜昭ラボ員、内藤航副ラボ長と、研究チームMARCO、日本プロサッカーリーグ()などが共同で実施したもの。調査結果は第62回NPB・Jリーグ新型コロナウイルス対策連絡会議で報告された。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

新型コロナウイルス感染が続く中、一度に多くの観客が集まるスタジアムのような大規模施設で開催されるイベントにおける感染リスクは、社会的にも注目されている。政府は、イベントにおける人数を制限してきたが、2021年12月以降は、「声出し応援をしない」と分類されるイベントでは、感染防止安全計画を策定することで、最大収容人数に対して100%の定員でのイベント開催が可能となっている。

産総研は、これまで政府、Jリーグらと連携して、スタジアムなどでの観戦における新型コロナウイルス感染予防のための調査を継続して実施しており、観戦時の観客のマスク着用の有無や、応援方法、スタジアム内の歓声などを評価する調査や感染リスク評価に関する研究を進めてきた。Jリーグなどのイベントでは、原則として声出し応援は禁止されていた。しかし、応援は、スポーツ観戦の楽しみの一つであり、高揚感や選手との一体感を得ることができ、コロナ感染拡大前の日常を取り戻すためにも、声出し応援の再開が待望されている。

声出し応援の感染リスクや各種対策を評価することは重要であり、産総研は2022年6月10日に「スポーツイベントの声出し応援に関する新型コロナウイルスの感染リスク評価―その1 声出し応援段階的導入試合の事前評価―」を公開した。これらの情報は、Jリーグに情報提供され、6月の公式試合における声出し応援段階的導入計画の声出し応援に関するガイドライン(STEP1)の設計に活用されている。

そこで、研究グループは、2022年6月11日、12日開催された「Jリーグの声出し応援段階的導入試合」のSTEP1の2試合(声出し応援エリア:収容率25%)、7月2日と6日に開催された同STEP2の6試合(声出し応援エリア:収容率50%)、7月30日と8月7日、10日、14日に開催された同STEP3の4試合(声出し応援エリア:収容率50%)において、カメラ撮影・AIを用いた画像認識によるマスク着用率の評価等の感染予防対策の実施状況に関する調査を、声出し応援エリアを中心に実施した。

声出し応援エリアのマスク着用率は94.8〜99.8%

観客のマスク着用率をAIによる画像認識を用いて評価した。声出し応援エリアの試合中のマスク着用率は94.8〜99.8%であり、不織布マスクを着用して応援をするというルールが遵守されていたことを確認した。今回確認されたマスク着用率は、声出し応援再開前のマスク着用率である94.3%をすべての会場で上回っていた。

また、観戦時における観客の座席位置遵守状況をAI画像認識による位置情報を用いて評価した。声出し応援エリアの観客間距離は、STEP1の試合中94.5〜97.0%で格子の座席位置が保たれており、座席間隔も適切に守られていることが確認された。座席位置が守られていないケースの大半は、子どもが親と近くにいるケースであることが確認された。なお、STEP2から座席配置が市松配置になったため、座っている人と立っている人が重なり合うケースが多く、STEP1で用いたAI解析が適用不可となり、STEP2、STEP3の評価ができておらず、解析方法が検討されている。

CO2濃度は平均で400~550ppm、空気が停滞する状況は確認されず

AIに基づく音響イベント検出により求めた観客による拍手と、チャンスなどにおける大人数の歓声および声出し応援の時間割合も計測した。声出し応援時間と拍手による応援時間が同程度であり、ホーム側応援席の声出し応援時間は120分中50.0〜51.1%(60〜62分)で試合時間の5割程度であることが確認された。

現地で声出し応援以外の席については、現地を視察する限りにおいて、声出し応援禁止席の観客が声出し応援をしている様子は確認なかった。また、ホームゴール裏の声出し応援席とバックもしくはメインの声出し応援禁止席で観測した音声量について、AIで応援音声を切り出した後、打楽器・拍手音を抑圧した信号のパワーを比較した結果、声出し応援禁止席のパワーは声出し応援席の平均で半分程度となり、声出し応援禁止席で声出し応援しているような状況ではないと評価された。これは、非応援席においても声出し応援席の音声が到達しているため、声出し応援禁止席のパワーが半分程度というデータは、声出し応援禁止席で声を出していることではないと考えられる。

CO2濃度については、声出しエリア、一般席ともに平均400~550ppm、高くても750ppm程度であり、試合終了後のCO2濃度がすぐに低下することから、空気が停滞している状況は確認されなかった。

多くの観客がガイドラインを遵守して観戦、声出し応援席の観客が感染予防に対する高い意識

今回の結果から、調査範囲においては、多くの観客が「声出し応援に関するガイドライン」を遵守して観戦していたことが確認された。声出し応援再開前の試合中のマスク着用率(平均94.3%)と比較して、声出し応援席のマスク着用率が高い結果(94.8〜99.8%)となったことからも、声出し応援席の観客が感染予防に対する高い意識を持っていたことが伺われる。

調査結果は、Jリーグやクラブに情報提供され、「公式試合における声出し応援に関するガイドライン」の改定に活用される。「スタジアムなどの大規模集客イベントなどで実施されている感染予防対策の効果の評価、対策の指針作りなど、新型コロナウイルス感染リスク評価や対策の評価に貢献したい」と、研究グループは述べている。

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