社会・経済活動の維持+新型コロナとの共存を可能にするニューノーマルなライフスタイルへ
大阪公立大学は9月5日、新型コロナウイルス感染症との共存を目指す社会では、一律にヒトの移動を抑制するのではなく感染状況に応じて特定の場所での人流のみを制御すれば感染者数の減少に効果がある可能性を見出したこと、食料品店・薬局および公園での人流と感染者数の関係性は強く、公共交通機関と感染者数の関係性が弱いことを発表した。この研究は、同大生活科学研究科居住環境学分野の加登遼助教、瀧澤重志教授の研究グループによるもの。研究成果は、「npj Urban Sustainability」と「PLoS ONE」に掲載されている。
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新型コロナウイルス感染症の流行から2年以上経過した現在、度重なる変異株の流行により、新
規感染者数の増減を繰り返している。新型コロナウイルス感染症は、後遺症など未解明な点も多く、現在も感染予防対策は必要不可欠だ。その社会的背景の中で、社会・経済活動を維持しながら、新型コロナウイルスとの共存を可能にするニューノーマルなライフスタイルの探求が求められている。研究グループは、そのニューノーマルなライフスタイルについて、人流の観点から研究を進めた。
総移動距離は感染者数と関係性「弱」
1つ目の研究では、2020年4月~2021年7月までの期間、大阪府茨木市を事例に、日々の個々人の総移動距離と新規感染者数に関する時系列相互相関分析を実施。その結果、総移動距離は1回目の緊急事態宣言発令時には大きく減少したものの、それ以降は、連休を除き大きく変動していないことが判明した。
さらに、相互相関が最も高くなるのはラグ6週間後で、総移動距離と新規感染者数は、わずかな正の相関しか見られないことを解明。この結果は、総移動距離は感染者数と関係性が弱く、総移動距離以外の要因が感染者数に影響している可能性を示唆している。例えば、マスクの着用や、飛沫の接触感染、換気状況などの方が影響する可能性がある。
感染者数と人流の関係性、食料品店・薬局など「強」/公共交通機関「弱」
そこで研究グループは次に、場所ごとの人流に着目した。2つ目の研究では、2020年3月~2021年9月までの期間、大阪府・京都府・兵庫県を対象に、各場所における人流(食料品店・薬局、公園、職場、住居、小売店、公共交通機関)と、2週間の合計感染者数の関係性を、ランダムフォレスト法により分析した。
その結果、2020年3月以降は、住宅地の人流を除く全ての人流が減少していたものの、食料品店・薬局の人流は、2021年5月以降に増加していることが判明。さらに、感染者数を減らすためには、2020年1月~2月時点と比べて、食料品店・薬局の人流は‐5%から+5%に制限し、公園の人流は‐20%以上に緩和することが必要であることが明らかとなった。食料品店はあらゆる世代が利用し社会的な接点も多い施設のため、人流が増えすぎないように制御することが重要だと考えられるとしている。
一方で、公共交通機関の人流と感染者数の関係性が弱いことが判明した。この結果は、全ての人流を抑制する必要はなく、感染状況に応じて特定の場所での人流のみを制御すれば、感染者数の減少に効果がある可能性を示唆している。
公共交通機関の利用、歩きやすい街づくりの必要性も示唆
これらの研究成果は、新型コロナウイルス感染症対策を行いながら、社会・経済活動を維持することを可能にするものであり、重要な結論だとしている。さらに、新型コロナウイルス感染症との共存を目指すポスト・パンデミックに向けて、公共交通機関を利用して、自動車を使わずに生活できるウォーカブルなまちづくり(歩きやすい街づくり)の必要性も示唆している、と研究グループは述べている。
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