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認知症、「加齢に伴うNOによるsGC増加」が発症リスク上昇要因である可能性-千葉大

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2022年09月05日 AM10:56

記憶低下の原因となる遺伝子を網羅的に探索、ショウジョウバエモデルで

千葉大学は9月2日、脳内で一酸化窒素(NO)によって活性化される可溶性グアニル酸シクラーゼ(sGC)が加齢に伴い増加することが、認知症の発症リスクを上昇させる一つの要因であることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院薬学研究院の殿城亜矢子講師と伊藤素行教授、真菌医学研究センターの高橋弘喜准教授の研究グループが行ったもの。研究成果は「Aging Cell」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

超高齢化社会が進行する日本では、認知症の患者数が増え続けているが、その発症メカニズムには多くの不明点がある。認知症の発症リスクを上昇させる最大の要因は「加齢」だ。加齢に伴う脳内の遺伝子発現の変化が認知症の発症要因となっている可能性が考えられるが、それらを網羅的に探索する研究は多大な労力と時間がかかるため、あまり行われていない。

認知症を含む加齢性記憶障害は、ヒトだけでなく、マウス、、線虫など多くのモデル動物でも共通してみられる現象だ。今回研究グループは、寿命が短いため老齢個体を容易に得ることができるショウジョウバエをモデル動物として用いた。ショウジョウバエは、匂いと電気刺激を同時に与えられると、その匂いを電気刺激と関連付けて学習し、一定時間記憶することができるが、老化したショウジョウバエでは記憶する能力が低下する。研究グループはこのようなモデルを用いて、加齢に伴い脳内で発現量が変化することによって記憶低下の原因となる遺伝子を網羅的に探索した。

sGCの発現量を脳内で低下させると記憶が上昇

研究グループは、遺伝子の発現量を解析する手法のRNAシーケンスを用いて、ショウジョウバエ脳内で加齢に伴い発現量が変化する遺伝子を抽出した。さらに、データベースとの比較解析を駆使して、記憶低下の原因となる候補遺伝子を絞り込んだ。それぞれの候補遺伝子の発現量を脳内で改変したショウジョウバエを作製し、それらの記憶能力を測定した。

その結果、NOによって活性化されるsGCの発現量が加齢に伴い増加し、sGCの発現量を脳内で低下させると記憶が上昇することが明らかになった。具体的には、一部の神経細胞でsGCの発現量を抑制させたショウジョウバエや、sGCを阻害する薬剤を投与したショウジョウバエでは、加齢による記憶低下が改善した。

NO合成酵素発現量を抑制させたショウジョウバエでも記憶低下が改善

さらに、脳内の神経細胞の周囲に存在するグリア細胞で、NOを合成する酵素であるNO合成酵素(NOS)の発現量を抑制させたショウジョウバエや、NOS を阻害する薬剤を投与したショウジョウバエでも、記憶低下が改善した。 これらのことより、加齢に伴いNOやsGCに関連する経路が活性化することが、記憶の低下を引き起こす一つの原因となることが示唆された。

NO/sGCに関連する経路はヒトでも同様に機能、メカニズムのさらなる解明に期待

NOやsGCに関連する経路は、ヒトを含めた哺乳類でも同様に機能している。今後は、NOやsGCに関連する経路が加齢に伴い活性化するメカニズムや記憶を低下させるメカニズムのさらなる解明が期待される。「研究で明らかになったことが、認知症に対する新薬開発や新たな生体内リスクマーカーの発見につながることが期待される」と、研究グループは述べている。

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