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しびれ感への新規リハビリ介入手法「しびれ同調TENS」を開発-長崎大ほか

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2022年08月30日 AM10:17

TENS周波数と強度をしびれ感に同調させる「しびれ同調TENS」、即時的効果を検証

畿央大学は8月25日、しびれ感に対する新たなリハビリテーション介入として「しびれ同調TENS」を開発し、脊髄機能不全症例における即時効果を明らかにしたと発表した。この研究は、長崎大学生命医科学域(保健学系)および畿央大学ニューロリハビリテーション研究センター客員研究員の西祐樹氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Human Neuroscience」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

脊髄損傷や頸椎症性脊髄症等の脊髄機能不全を呈する多くの患者において、ビリビリ、チクチク、ヒリヒリと表現されるしびれ感が生じる。しびれ感は「感覚神経伝導路の障害によって起こる自発性異常感覚」と定義され、ADLやQOLが著しく阻害される。そのため、しびれ感に対する治療介入の必要性は極めて高い。しかし、しびれ感に対する薬物療法は効果が乏しく、有害事象のリスクが高いことがシステマティックレビューにおいて報告されている。また、リハビリテーションによる改善は困難とされており、しびれ感に対する体系的な介入は十分に確立されていないのが現状だ。

今回、研究グループは、経皮的神経電気刺激(TENS)の周波数と強度をしびれ感に同調させるしびれ同調TENSを開発し、即時的効果を検証した。脊髄損傷や頸椎症性脊髄症等の脊髄機能不全症例9名に対して、まず電気刺激に対するしびれ感の評価を実施。具体的には経皮的神経電気刺激(TENS)の周波数と強度を、主観的なしびれ感の細かさ(ビリビリ、チクチクの間隔)と強度に同調させる手続きを行う。これにより、しびれ感をニューロンの発火頻度を反映する「周波数」と動員される神経線維数を反映する「刺激強度」というパラメータにて定量的にしびれ感を評価することが可能になる。そして、しびれ感に同調したTENS(しびれ同調TENS)の実施前および実施中にマクギル痛み質問票ならびに定量的感覚検査(QST)を行った。

しびれ感改善、感覚障害やアロディニアも有意に改善

研究の結果、しびれ同調TENSにより即時的にしびれ感の著明な改善が観察された。多くの症例において「しびれ感とTENSによる電気が流れる感覚が打ち消し合ってどちらもなくなった」と表現しており、感覚障害や触るだけで痛いアロディニアも有意に改善された。このしびれ感とともにTENSの感覚までも減弱する現象は、従来の下降性疼痛抑制系やゲートコントロール理論では説明できず、新たなメカニズムによりしびれ感が改善している可能性がある。

一方、体性感覚誘発電位が消失している、つまり重度感覚障害の症例では、しびれ感にTENSを同調させることができず、適応とはならなかった。これらのことから、知覚に関連した脳領域におけるしびれ感の抑制や、しびれ感に関連した末梢神経線維を選択的に遮断するbusy line effectが作用メカニズムとして推察されるとしている。

今後は長期的効果の検証、作用機序の解明に取り組む

しびれ同調TENSは、治療に難渋してきたしびれ感に対する新たな介入手法であり、リハビリテーションの介入領域を拡大する可能性がある。研究グループは今後、しびれ同調TENSの長期的効果の検証や作用機序の解明に取り組む予定だとしている。

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