COVID-19患者の重症化メカニズムを「消化管障害」の観点から明らかに
札幌医科大学は8月26日、新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症患者の消化管における「トリプトファン代謝障害」を明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部消化器内科学講座の横山佳浩研修医と仲瀬裕志教授の研究グループによるもの。研究成果は、「Frontiers in Medicine」にオンライン掲載されている。
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COVID-19は、いまだに世界的なパンデミックを引き起こしているが、重症化のメカニズムは明らかになっていない。また、COVID-19患者は下痢、悪心・嘔吐、食欲不振、腹痛などの消化器症状を起こし得ることが知られている。
そこで研究グループは今回、COVID-19患者の重症化メカニズムを消化管障害の点から明らかにすべく、2020年6~11月までに同大附属病院で入院治療を行った患者を対象として研究を行った。
IL-6が重症例の炎症マーカー、重症患者は便中カルプロテクチン高値でインドール-3-プロピオン酸が減少
研究グループは、COVID-19患者の血液サンプル、便サンプル、下部消化管内視鏡検査の際に採取した腸管組織を用いて、COVID-19重症化に寄与する因子を同定するため、血清中の炎症性サイトカインや血栓・血管内皮マーカーの測定、便中カルプロテクチン、マイクロバイオーム解析、およびメタボローム解析を行い、重症群と非重症群で比較検討を行った。
その結果、血液では「インターロイキン(IL)-6」が重症例の炎症マーカーであると判明。また、重症のCOVID-19患者では、腸管の炎症マーカーである「便中カルプロテクチン」が高値であることもわかった。同時に、便中の代謝物質解析ではヒトの健康維持に重要なトリプトファンの代謝産物である「インドール-3-プロピオン酸」の著明な減少がみられたとしている。
トリプトファン代謝に重要な遺伝子群の発現が著名に低下
さらに、重症COVID-19患者腸管組織の解析結果から、小腸においてトリプトファン代謝に重要な役割を果たすアンギオテンシン変換酵素2(ACE2)、芳香族炭化水素受容体(AhR)、カスパーゼリクルートドメイン9(CARD9)などの遺伝子発現が著明に低下していることも確認された。
以上の結果から、重症COVID-19において「腸管内トリプトファン代謝障害」が生じることが示唆された。
COVID-19重症化メカニズムの解明や治療・予防法への貢献に期待
今回の研究データが、COVID-19重症化メカニズムのさらなる解明や治療・予防法への応用に貢献することが期待される、と研究グループは述べている。
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