薬剤師によるコロナワクチンの接種をめぐっては、2021年5月末の厚労省検討会で、予診のサポートや接種後の経過観察など、現行法上実施可能な業務で貢献することが全体の接種効率化につながるとして、当面の接種見送りを決定した。
日薬はその後、薬剤師による接種が必要になった場合に即応できるよう接種に関する基礎知識や手技等を学習する「予防接種研修プログラム」を実施しており、この日のヒアリングでは22日時点で1都1府6県で同プログラムが開催され、講義修了者564人のうち実技を修了した薬剤師は計411人であると公表した。予防接種以外に注射・点滴の手技、採血手技の実習を導入している大学の取り組みも説明した。
その上で、医療逼迫時を想定し、「接種の打ち手となる本来の職種による対応が厳しい場合など、極めて限定的な場合に薬剤師が地域で打ち手として対応できる余地はある」としつつ、必要な訓練を行った薬剤師に限定した対応を想定しているとの考えを示した。
中谷晴昭構成員(千葉大学理事)は、「決して薬剤師が排除されたわけではない」とし、大学における職域接種の経験も踏まえ、「薬剤師に薬液の調整等も含めていろいろと働いてもらった。(医師等が不足する)かなり高度な緊急事態に対応するため、医療職種の役割を予め考えておくべき」との考えを示した。
医師以外の医療職種が接種の担い手となるためには、医師法に対する違法性が阻却できるかが論点となるが、井本寛子構成員(日本看護協会常任理事)は「厚労大臣が業務独占を解除する権限を持つことが妥当。また、各職種の業務内容に基づき、打ち手となれる職種を明確にすべき」とした。
一方、磯部哲構成員(慶應義塾大学法務研究科教授)は「違法性の阻却というロジックを今後も便利に振り回すのは妥当ではなく、被接種者の安全確保のための研修等は本来は立法で手当てすべき」と反対した。その上で、「担い手が本当に不足しているのか分からずに不足を根拠にするのは問題だし、違法性の阻却で具体的にどれほど人員確保に役立ったか検証すべき」と訴えた。
釜萢敏構成員(日本医師会常任理事)も「そんなに足りていないとは感じておらず、業務ができなかったとの評価は異なる。実際に、人材がいなくて業務ができなかったのか調査しないと判断できない」とした。