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IVR術者用の新たな放射線防護具を開発、検証実験で80%超えの遮蔽効果-東北大ほか

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2022年08月26日 AM10:09

従来の水晶体被ばく防護具・鉛防護眼鏡は遮蔽率が不十分

東北大学は8月25日、画像下治療()術者用の、フェイスシールドと甲状腺プロテクタを一体化させた構造の新しい放射線防護具の開発に成功したと発表した。この研究は、同大医学系研究科放射線検査学分野の江口洋一非常勤講師、千田浩一教授(災害科学国際研究所災害放射線医学分野)、山形大学病院の佐藤俊光氏、山崎智加氏、日野隆喜氏、奈良県西和医療センターの才田壽一氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Bioengineering」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

X線透視像などを用いたIVR等に携わる放射線従事者は、放射線白内障などの障害が発生するリスクがあり、そのリスクは従来考えられていたよりも高いことがわかってきた。2011年に国際放射線防護委員会(ICRP)は、眼の水晶体の被ばく限度(水晶体等価線量限度)を従来の150mSv/年から20mSv/年(100mSv/5年)へと大幅に引き下げる声明を発表し、翌2012年にはICRP勧告を発出して注意喚起した。日本では2021年、ICRP勧告を採り入れた新法令が施行されたが、IVR術者に対しては、その業務内容上新しい水晶体等価線量限度を超過する恐れがあるため、特例的に経過措置が設けられた。よってIVR術者の水晶体被ばく線量を低減することが現在大きな課題となっている。

水晶体被ばく防護具として鉛防護眼鏡がある。しかし、その遮蔽率は多くの場合50%程度であり、防護効果は十分とはいえない。さらにIVR手技中に鉛防護眼鏡が曇ったり、眼鏡自体が重く長時間の手技に支障をきたす場合もある。よってIVR術者用の新しい水晶体被ばく防護具の開発が期待されている。

術者の左側からの被ばくを効果的に防護でき、しっかりと固定可能なデザイン

開発された新しい放射線防護具は、エリザベスカラーを斜めに切ったような形状の鉛入フェイスシールドを、甲状腺鉛プロテクタの左肩側に一体化させた構造で、従来に無いユニークな発想のIVR術者用の鉛防護具となっている。水晶体を含めてIVR術者の首から頭へかけての被ばく防護が可能だ。IVR術者の立ち位置上、多くのIVR術者は主に左側から発生する散乱X線によって被ばくすることがわかっているため、新しい放射線防護具は、その左側からの被ばくを効果的に防護できるデザインになっている。さらに、視野の妨げにならず、かつ重量感をあまり感じさせないようなデザインであり、またIVR術者が動いてもズレないよう術者にしっかりと固定でき安定性が良いように開発されている。

実験における眼の水晶体線量の平均遮蔽率、左眼87.5%、右眼83.6%

同防護具の遮蔽能力について、人体ファントム実験において確かめたところ、ほとんどの測定条件において、80%を超える高い遮蔽効果があることがわかった。眼の水晶体線量の平均遮蔽率は、左眼で87.5%、右眼で83.6%であり、鉛防護眼鏡よりも高い遮蔽効果が期待できることがわかった。さらに、IVR術者は左側の頭部に腫瘍の発生が多いという報告がある。左側からの放射線を効果的に遮蔽可能な新しい放射線防護具は、IVR術者の頭部腫瘍の発生リスクの軽減にも役立つことが期待される。

「IVR術者用の新しい放射線防護具の開発に成功した。IVR術者の左側からの放射線を効果的に遮蔽可能で、IVR術者の放射線障害(放射線白内障等)の発生リスクの低減に役立つことが期待される」と、研究グループは述べている。

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