NDBデータで糖尿病に対する「SGLT2阻害薬」と「DPP4阻害薬」の効果を比較
国立循環器病研究センターは8月23日、厚生労働省が保有するレセプト情報・特定健診等情報データベース(National Database、以下NDB)を用いて、糖尿病を合併した心不全患者を対象に「SGLT2阻害薬の使用がDPP4阻害薬の使用と比べ、良好な予後と関連する」ことを明らかにしたと発表した。この研究は、同センターオープンイノベーションセンター情報利用促進部の中井陸運室長と岩永善高部長、奈良県立医科大学、大阪大学の研究グループによるもの。研究成果は、「Cardiovascular Diabetology」にオンライン公開されている。
糖尿病治療薬であるSGLT2阻害薬が心不全治療においても有効だという多くの結果が報告されているが、日本の糖尿病合併心不全患者におけるリアルワールドデータ、さらには超高齢者への有効性が示されている報告は少数だった。
そこで研究グループは今回、NDBデータを用いて、SGLT2阻害薬処方と1年予後との関連を調べ、日本の糖尿病患者によく使用されるDPP4阻害薬との比較を行った。
SGLT2阻害薬投与群はDPP4阻害薬投与群に比べ年齢が若く心不全治療薬の服用が多い
2014~2018年度の5年間において、急性心不全入院患者をNDBデータベースより抽出。そのうち、「急性冠症候群が合併している患者」「院内死亡した患者」「退院時処方に心不全治療薬を1つも投与されていない患者」を除外した4,176病院30万398人を解析対象とした。アウトカムについては1年以内の総死亡、再入院、心不全再入院とした。
急性心不全初回入院患者のうち、21万6,016人(71.9%)が75歳以上であり、糖尿病合併患者は9万7,682人(32.5%)だった。また、SGLT2阻害薬投与群はDPP4阻害薬投与群に比べて年齢が若く、心不全治療薬(β遮断薬・ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬、アンジオテンシン変換酵素阻害薬/アンジオテンシンII受容体拮抗薬)の服用も多い傾向にあることがわかった。
SGLT2阻害薬投与集団では死亡リスク30%減、再入院リスク48%減
患者背景の補正などを行った傾向スコアを用いた統計解析結果では、DPP4阻害薬投与集団に比べ、SGLT2阻害薬投与集団では死亡リスクが30%減少し、75歳以上でも32%減少しているという結果だった。心不全による再入院リスクにおいても、SGLT2阻害薬集団では、48%減少し、75歳以上でも41%減少する結果だったとしている。
超高齢者治療など幅広い医療現場の診療向上への寄与に期待
今回の研究成果により、超高齢者化社会の日本のリアルワールド診療データベースにおいて「糖尿病合併心不全患者におけるSGLT2阻害薬の使用はDPP4阻害薬に比べ、良好な予後と関連する」ことが示された。
本研究結果は、リアルワールドエビデンスとして、超高齢者の治療を含んだ幅広い医療現場の診療の向上に寄与することが期待される、と研究グループは述べている。
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・国立循環器病センター プレスリリース