更年期以降に発症リスクが高くなる女性の糖尿病、閉経後の高尿酸血症との関連は不明
国立循環器病研究センターは8月24日、都市部地域住民を対象とした吹田研究を用い、閉経前後の女性における血清尿酸値と糖尿病罹患リスクとの関連について検討したと発表した。この研究は、同研究センター健診部の小久保喜弘特任部長らの研究グループによるもの。研究成果は、「Menopause」に掲載されている。
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生活習慣と社会環境の変化に伴い、糖尿病患者数は増加している。令和元年国民健康・栄養調査報告によると、「糖尿病が強く疑われる人」の割合は、男性19.7%、女性10.8%だった。女性の割合は男性より低く見えるが、更年期以降に女性ホルモンが減少して、インスリンの働きも弱くなるため、糖尿病の発症リスクが急速に増える。糖尿病を放置すると網膜症・腎症・神経障害などの合併症を引き起こして、心筋梗塞や脳卒中などの循環器疾患の発症リスクを高める。
更年期以降の女性のもう一つ著しい変化は、女性ホルモンの減少により尿酸値が増えやすいことである。女性ホルモンによって尿酸値がコントロールされているため、閉経前の女性の尿酸値は低いが、閉経後はホルモンの低下に伴い、高尿酸血症のリスクが増大する。高尿酸血症は糖尿病の危険因子であるが、閉経前後の女性における検討は乏しい。そこで研究グループは、女性における血清尿酸値と糖尿病発症リスクとの関連を閉経前後別に検討することにより健診や日常外来で糖尿病罹患の予防の一助になると考えた。
閉経後の女性において血清尿酸値の高値と糖尿病罹患リスクにより強い関連
今回の研究では、吹田研究の参加者である30~79歳の都市部一般住民のうち、ベースライン調査時に循環器疾患と糖尿病の既往者を除外した女性3,304人(閉経前1,252人、閉経後2,052人)を対象として、糖尿病の新規発症を14年間追跡して、新規の219人の糖尿病罹患を観察した。閉経前の女性において、血清尿酸値の低値群と比べて、血清尿酸値高値群の多変量調整ハザード比は1.56(95%信頼区間は0.77-3.16)だった。一方、閉経後の女性において、血清尿酸値高値群の多変量調整ハザード比は2.00(95%信頼区間は1.19-3.34)となっており、閉経後の女性では、血清尿酸値の高値と糖尿病罹患リスクとの関連を認めた。
血清尿酸値レベル別での糖尿病予防も
高尿酸血症は、生活習慣と深くかかわる病症であり、尿酸値検査は、特定健診・特定保健指導で重視される検査項目である。高尿酸血症は、糖尿病、循環器疾患などの生活習慣病の危険因子として報告されているが、今回の研究では、これまで関係性がよくわからなかった女性の閉経前後別における血清尿酸値の高値と糖尿病罹患リスクとの関連を明らかにした。その結果、閉経後の女性では、血清尿酸値の高値と糖尿病罹患リスクとの関連を認め、閉経前の女性でも、同様な傾向性を認めた。これらの結果は、今後の特定健診・特定保健指導における糖尿病予防の参考となるエビデンスとなると考えられるという。
今回の研究は、健診や日常外来の現場で、更年期以降の女性において血清尿酸値レベル別での、糖尿病予防を行うことに意義がある可能性が示された。「更年期以降の女性は、ホルモンの保護作用を失って、生活習慣の乱れによる尿酸値の上昇に注意する必要があると考えられる。更年期以前でも、血清尿酸値の高値と糖尿病との関連性が否定できないことから、同様に注意する必要があると考えられる」と、研究グループは述べている。
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・国立循環器病研究センター プレスリリース