出生時から13歳まで、継続的に調査した単施設前向きコホート研究
国立成育医療研究センターは8月24日、2003年から一般小児を対象として行ってきた出生コホート研究(成育コホート)の、出生時から13歳までのデータより、日本(東京)の青少年のアレルギー症状の実態と、湿疹の出現時期や持続経過により併存するアレルギー疾患のリスクが異なることを報告した。この研究は、同センターアレルギーセンターの大矢幸弘センター長、山本貴和子医長、木口智之医師らの研究グループによるもの。研究成果は、「Allergology International」に掲載されている。
画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)
同センターが行っている成育コホートでは、2003年~2005年に妊娠した母親を登録し、現在まで母親と誕生した子どもを妊娠中から継続的に追跡し、アンケート調査、診察、血液検査により、喘息などのアレルギー性疾患や症状、IgE抗体価などを調査している。今回の調査では、出産予定の妊婦1,701人、生まれた子ども1,550人が対象となっている。
病院を受診した子どもを調査したのではなく、同センターで出産した一般集団の子どもを追跡し、健康状態の推移を調査した縦断的研究(前向きコホート研究)である。過去にさかのぼって情報を集めて比較する後ろ向きコホート研究や、現時点のみを調べる横断研究よりエビデンス・レベルの高い疫学調査といえる。
68.8%が鼻炎症状、81.8%はIgE抗体陽性
調査参加者が13歳時点で、過去1年間に鼻炎症状を認めたのは68.8%、喘息症状(喘鳴)があったのは5.8%だった。また、13歳時点で、何らかのアレルゲンにIgE抗体陽性(感作)があったのは81.8%だった。
湿疹が乳児期から持続するタイプは、さまざまなアレルギー症状の併存リスク「高」
13歳までの間に、湿疹(アトピー性皮膚炎)の既往があったのは35.7%、湿疹が乳児期から持続するタイプは6.8%、乳児期によくなるタイプは23.7%、乳児期以降に湿疹が出るタイプは5.1%だった。湿疹が乳児期から持続するタイプは、喘息症状や鼻炎症状や花粉症やアレルギー感作(IgE抗体陽性)との併存リスクがあった。一方、乳児期以降に発症するタイプは鼻炎症状のみ関連し、その他のアレルギー症状やアレルギー感作とは関連がみられなかった。さらに、湿疹が持続するタイプは、スギ感作(IgE抗体陽性)が90.6%で認められ、湿疹がこれまでにないタイプも63.5%がスギ感作を認めた。
青少年でアレルギー増加の懸念、適切な介入が推奨される
湿疹(アトピー性皮膚炎)の経過は子どもによってさまざまだが、乳児期から持続する湿疹タイプはその他のアレルギー症状との併存リスクが高くなる。また、日本人の青少年の多くが鼻炎やアレルギー検査陽性になっていることからアレルギーの増加が懸念される。「喘息症状より鼻炎症状に困っている青少年が多いと考えられる。個々の症状に合わせた適切な介入が推奨される」と、研究グループは述べている。
▼関連リンク
・成育医療研究センター プレスリリース