医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > レヴィ小体病の霊長類モデル開発、嗅覚系伝播経路と認知機能障害の関連性を解明-京大

レヴィ小体病の霊長類モデル開発、嗅覚系伝播経路と認知機能障害の関連性を解明-京大

読了時間:約 2分22秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年08月24日 AM11:11

霊長類における「嗅球からのαシヌクレイン伝播」をマーモセットで解析

京都大学は8月23日、「αシヌクレイン」の凝集体(フィブリル)を霊長類の一種であるマーモセットの嗅球へ投与する実験により、パーキンソン病などを含むレヴィ小体病における嗅覚系伝播経路と認知機能障害の関連性について明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部附属病院の澤村正典特定病院助教、同院脳機能総合研究センターの尾上浩隆特定教授、同大大学院医学研究科の山門穂高特定准教授、上村紀仁特定助教、伊佐正教授、高橋良輔教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Movement Disorders」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

パーキンソン病は、動作が緩慢になるなどの運動機能障害を主徴とする進行性の神経変性疾患で、進行期になると高確率に認知症を合併する。パーキンソン病の類縁疾患としてレヴィ小体型認知症という病気も知られており、これらはまとめて「」とも呼ばれる。現代においては、高齢化に伴い認知症は大きな社会問題となっており、介護者を筆頭に、社会的・経済的にも大きな負担となっている。

昨今、レヴィ小体病は、原因であるαシヌクレインというタンパク質の凝集物が脳内で神経細胞から神経細胞へと伝播するという現象が注目されている。患者の脳の剖検解析の結果から、レヴィ小体病では嗅球や下部脳幹から、それぞれ特定の経路に沿ってαシヌクレインの伝播が生じると考えられている。これまで、マウスなどのげっ歯類にαシヌクレインの凝集体(フィブリル)を脳内へ投与することで、パーキンソン病のモデルとなることが報告されてきた。しかし、霊長類での報告は限られており、特に霊長類の嗅球からの伝播経路については報告がなかった。そこで研究グループは今回、マーモセットの嗅球へαシヌクレインの凝集体を投与し、嗅球からのαシヌクレインの伝播を再現することを目的として研究を行った。

αシヌクレイン凝集体投与で嗅球が萎縮、パーキンソン病やレヴィ小体病に類似の異常が出現

まず、人工的に作成したαシヌクレインフィブリルを4頭のマーモセットの片方の嗅球に投与。投与されたαシヌクレインの凝集体は嗅球の神経細胞へ取り込まれ、異常なαシヌクレインの凝集を生じ、神経細胞から神経細胞へと伝播する。

3か月後のマーモセットでMRIを撮影すると、αシヌクレインの凝集体を投与した嗅球が萎縮していることがわかった。さらに3か月、6か月後に1頭ずつのマーモセットで18F-FDG-PETを行い、脳機能の評価を行うと、αシヌクレインフィブリルを投与側では、広範囲に糖代謝が低下していることが判明した。特に、視覚に関連した部位での低下も認め、これは認知症を伴うパーキンソン病やレヴィ小体型認知症で認める異常と類似したものだったという。

霊長類レヴィ小体病モデルでαシヌクレインの嗅覚系伝播経路と認知機能障害の関連性確認に成功

これらのマーモセット脳内では、嗅覚系経路に沿って次々と伝播し、異常なαシヌクレインである「リン酸化αシヌクレイン」が出現することが明らかとなった。

さらに、この新しいレヴィ小体病のマーモセットモデルを調べることで、αシヌクレインの嗅覚系伝播経路と認知機能障害の関連性を示すことに成功。これは、パーキンソン病では嗅覚障害と認知機能障害の関連性が報告されていることを裏付けるものだったという。

パーキンソン病やレヴィ小体型認知症の早期診断や認知機能の治療開発目指す

今回、レヴィ小体病におけるαシヌクレインの嗅覚系伝播経路について、霊長類を用いて解析することに成功した。今後はこのレヴィ小体病の霊長類モデルを使用し、パーキンソン病やレヴィ小体型認知症の早期診断や認知機能障害の治療につなげていきたいと考えている、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 前立腺がん、治療決定時SDMが患者の治療後「後悔」低減に関連-北大
  • 糖尿病管理に有効な「唾液グリコアルブミン検査法」を確立-東大病院ほか
  • 3年後の牛乳アレルギー耐性獲得率を予測するモデルを開発-成育医療センター
  • 小児急性リンパ性白血病の標準治療確立、臨床試験で最高水準の生存率-東大ほか
  • HPSの人はストレスを感じやすいが、周囲と「協調」して仕事ができると判明-阪大