医師では免許取得後2年間の初期研修が必須化されている一方、薬剤師では卒後研修の法的規制はなく、各施設が独自の研修体制を構築している。薬剤師の資質向上に向けては、薬学部の卒前・卒後で一貫した検討が課題となっている。
名古屋大学病院の山田清文薬剤部長が研究代表者を務めた2019年度から3年間の厚生労働科学研究班の調査では、1カ月以上のカリキュラムによる研修が実施できていない施設が全体の68%(1017施設)に上っていることが判明した。
山田氏は、「医師と同様に薬学生の在学中からキャリアパスを支援する体制を構築することが必要で、特に卒後研修は実践能力の養成で非常に大事な期間」と指摘した。
卒後研修にシームレスにつなげるには卒前教育の充実が求められるが、昭和大学薬学部の中村明弘教授は同大が今年度の4年生後期から開始する臨床実習・臨床研究を中心としたカリキュラムを紹介した。
同カリキュラムに組み込まれた「ファーマシューティカルケアプログラム」では、ワクチン接種の担い手になることを想定した臨床手技、附属病院での精神医療実習、臨床研究や症例研究に関する入門編も学習可能な内容としている。
中村氏は、「卒後研修プログラム修了時に身に付けておくべき資質・能力を明確にできれば、それに応じたプログラム、卒前教育内容も検討できる」とし、「学部でカリキュラムを学習後、レジデントによる臨床研修、生涯研鑽を通じて、より高いレベルで社会や医療に貢献する薬剤師を育てたい」と述べた。
宮崎薬局の宮崎長一郎代表取締役は、「卒後は病棟研修を中心とした濃密な薬物治療の現場を経験するシステムを構築してほしい」として、薬局薬剤師にもレジデント制度が必要と指摘。
その理由として、「単独で薬学的管理・指導を実践できるようにするためには、チーム医療を経験し、薬剤師同士の症例検討も必要」との考えを示した。