骨粗鬆症治療薬PTH(1-34)に着目
大阪公立大学は8月9日、腱組織に副甲状腺ホルモンPTHを注入して半月板切除部位へ移植することで、正常な半月板に近い軟骨のような組織が再現できることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科整形外科学の西野壱哉大学院生、橋本祐介講師、中村博亮教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The American Journal of Sports Medicine」オンライン版に掲載されている。
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膝半月板は関節の軟骨を守る緩衝材として重要な組織だが、損傷すると治りにくいため、切除されることが多い。半月板を切除された膝は軟骨の損傷が進むため、日本では自分の体から採取した腱を用いた半月板再建手術が行われている。しかし、腱と半月板はそもそも違う組織であるため、その治療成績は安定していない。そこで研究グループは、移植する腱を元の半月板組織に近づけるような追加処置ができれば、治療成績が向上し、膝関節の軟骨を守ることができるのではないかと考え、研究を進めた。
また、研究グループは骨粗鬆症治療薬としてすでに臨床利用されているPTH(1-34)に着目。PTH(1-34)は、投与方法によっては軟骨分化を誘導することが近年明らかになってきている。
PTH(1-34)注入アキレス腱移植で再生組織は正常半月板により近い特徴、高い関節軟骨保護作用も
ラットアキレス腱細胞にPTH(1-34)を投与し培養したところ、軟骨基質の産生と、軟骨分化に関与する遺伝子発現の上昇を認めた。
また、ラットアキレス腱にPTH(1-34)を注入したところ、腱組織内に軟骨基質を認めた。また、ラットの膝内側半月板を切除し欠損を作り、そこにPTH(1-34)注入アキレス腱を移植したところ、再生組織は正常半月板により近い特徴を示し、高い関節軟骨保護作用も示した。
半月板再建手術の治療成績向上に期待
今回の研究成果は、患者自身の腱を移植する半月板再建手術の治療成績向上につながることが期待される。今後は、より大きな動物を用いてPTH(1-34)の効果を検証し、ヒトでの有効な投与量を確立して臨床利用へ進めていく、と研究グループは述べている。
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