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2cm以上の早期大腸がんに対するESD治療、術後QOLと生存率向上を確認-国がんほか

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2022年08月15日 AM11:00

内視鏡用高周波ナイフを使用した治療、長期的な安全性と治療効果の報告が待たれていた

国立がん研究センターは8月5日、転移リスクの少ない2cm以上の早期大腸がんに対し、内視鏡治療で電気メスを用い病変を切除する内視鏡的粘膜下層剥離術()を行った1,883人(1,965病変)の5年の全生存率、疾患特異的生存率、腸管温存率などを国内20施設との前向きコホート研究で調査し、いずれも良好な治療結果が得られることを確認したと発表した。この研究は、同センター中央病院とNTT東日本関東病院などの研究グループによるもの。研究成果は「Gastroenterology」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

大腸がんは、日本では最も、また世界的にも頻度が高い。その一方で、早期治療による生存率が高いため、早期発見と患者の負担が少ない治療が求められている。転移リスクの少ない2cm以上の早期大腸がんの治療法には、今回の研究で検討したESDのほかに、腸管を切除する外科手術と内視鏡的に輪状の細いワイヤー(スネア)を用い病変を切り取る内視鏡的粘膜切除術()がある。外科手術は病変を取り残しなく切除できるものの患者さんの負担が大きく、術後のQOLの低下が課題となっている。一方、EMRは簡便かつ短時間で治療可能だが、スネアの直径を超える2cm以上の病変は分割して切り取られることで取り残しが生じ、再発につながることが課題となっていた。

ESDは、国立がん研究センターによる内視鏡用の高周波ナイフ(ITナイフ)の開発や手技の確立により開発された治療方法である。2006年4月に早期胃がんの内視鏡治療として保険適用され、その後、早期大腸がんでの応用も進み、2009年7月には先進医療で評価、2012年4月には保険適用となり全国に普及した。ESDは高度な技術や時間を要するものの、患者の負担が少なく、長期的な安全性と治療効果に関する大規模な研究報告が待たれていた。

5年の調査で疾患特異的生存率99.6%、治癒切除後の腸管温存率98%

短期観察では、病変を分割せず切除することで取り残しを回避する一括切除の割合と、有害事象の発生率を調査した。結果として、一括切除割合は97%で、病理学的に追加手術が必要ないと判断された(治癒切除)割合は91%となった。有害事象では、腸に穴が開く穿孔を2.9%、術後出血を2.6%で認めたが、多くが腸管を切除せず保存的な加療での対処が可能であった。0.5%で穿孔・出血のために外科手術が必要となった。

長期観察では今回の研究の主目的である、5年の全生存率、疾患特異的生存率、腸管温存率を調査した。その結果、5年の全生存率は93.6%、疾患特異的生存率は99.6%、腸管温存率は88.6%で、治癒切除が得られた場合の腸管温存率は98%と非常に高い割合となった。また、治癒切除後の局所再発は0.5%(8例)で認めたが、全例で内視鏡による追加治療が可能だった。一方で、異時性大腸がんが1%(15例)で認められ、13例で手術が施行された。

再発リスクが低くQOLを維持できるESDが、今後の治療の第一選択となる可能性

今回、ESDによる治療は、2cm以上の早期大腸がんに対し、高い割合で治癒切除が可能であり、長期的にもその状態が維持されることが明らかとなった。また、安全性やQOLの観点からも優れていることが示された。一方、大腸ESDで治癒切除が得られた場合は、局所再発だけでなく異時性大腸がんの発生に注意する必要が示唆され、術後の定期的な経過観察の必要性も明らかとなった。

これらの結果から、2cm以上であっても転移リスクの少ない早期大腸がんであれば、EMRよりも再発リスクを抑えられ、外科手術よりも術後のQOLを維持できるESDが治療の第一選択となる可能性が示された。「現在、海外においてはESD の難易度の高さからEMRが標準治療として位置づけられているが、今回の結果を踏まえ、今後は世界的にもESDが標準治療となり、世界でも患者数の多い大腸がんの早期発見・治療による術後の患者さんのQOLと生存率の向上が期待される」と、研究グループは述べている。

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