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ヒト造血幹細胞移植、HSC体外増幅技術と移植予後診断システムを開発-AMEDほか

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2022年08月09日 PM12:13

移植によるレシピエントのGVHD問題、予後予測を解決するための開発

(AMED)は8月3日、医療研究開発革新基盤創成事業(CiCLE)の研究開発課題「造血幹細胞の体外増幅技術の開発と移植医療への応用」において、「ヒト造血幹細胞(ヒトHematopoietic Stem Cell:ヒトHSC)増幅技術」および「ヒトHSC移植予後予測コンパニオン診断システム」を開発したと発表した。この研究はAMEDとネクスジェン株式会社(研究者:宮西正憲CSO、宮塚功CISO)、京都大学(研究者:大学院医学研究科内科学講座血液・腫瘍内科学の高折晃史教授、医学部附属病院血液内科の諫田淳也講師)および神戸市立医療センター中央市民病院の委託研究開発契約に基づき実施されたものだ。

ヒトHSC移植は白血病等の血液がんの完治を目指す主な治療法のひとつであるが、現在の移植技術ではヒトHSC以外の多くの細胞が含まれることから移植片対宿主病(Graft Versus Host Disease:GVHD)等の重大な副作用が問題となっている。これを解決する方法として長期持続的な造血に関与するヒトHSC(ヒトLT(Long Term)-HSC)を単離し、体外で増幅をする移植技術が期待されている。また、臨床現場において、ヒトHSC移植のドナーを選別するために用いる既存の指標では、レシピエントにおけるヒトHSC移植の予後予測は困難であり、これを解決する方法の開発が望まれていた。

ヒトLT-HSCのバイオマーカー同定、体外で高純度に増幅を可能にする培養法等の最適化

そこで、今回の研究では、第一に、移植時の副作用の問題を解決し、ヒトHSC移植後の生着率向上を目的として、ヒトLT-HSCをバイオマーカーにより単離し、体外で高純度に増幅するための培養方法等の最適化を行った。

具体的には、独自の解析手法を用いてヒトLT-HSCのバイオマーカーを同定した。また、ヒトLT-HSCの体外増幅技術の開発については、ヒトLT-HSCの未分化性を維持しつつ生体外で増殖する条件について研究開発を実施。その結果、ヒトLT-HSCのバイオマーカーを用いて得られた細胞分画を1週間培養しても純度は50%以上を維持した。

ヒトHSC移植予後コンパニオン診断システムの開発、早期の生着を予測する因子も特定

第二に、ヒトHSC移植の予後予測や患者毎に最適なドナー選択を可能にし、患者QOL(Quality of Life:生活の質)を向上させることを目的として、ヒトHSC移植予後予測コンパニオン診断システムを開発した。具体的には、過去の移植治療結果を基に幹細胞移植治療における患者毎の生存(GRFS(GVHD-free, relapse-free survival)、Relapse、GVHDの3か月後および1年後の予後を予測する機械学習モデルを構築した。この研究成果は、「Blood Advances」に掲載されている。

さらに、新規に同定したマーカーセットを用いたLT-HSC推測値と、これまで臨床や基礎研究で用いられてきた推測値とを比較し、早期の生着を予測する因子を特定した。

研究成果である「細胞培養液」、2022年度中の販売開始を計画

今回、研究グループは、培地の開発や新規表面マーカーの同定など、新たな造血幹細胞抽出培養技術であるヒトHSC増幅技術およびヒトHSC移植予後予測コンパニオン診断システムを開発した。ヒト幹細胞の特性や表面マーカーの特徴がより明確となったほか、HSCを増幅するためのアミノ酸組成などの新たな知見も見出した。

「研究成果により、長年課題であった移植後の副作用問題の改善につながる可能性を見出した。これらの技術の確立はHSCの免疫寛容効果の応用につながり、将来的に副作用の少ない他家移植の実現、および再生医療の更なる普及、希少・難治性疾患治療への応用が期待される」と、研究グループは述べている。

なお、ネクスジェンは、研究成果の1つとなる「細胞培養液」(RUO:Research Use Only(研究用途))の2022年度中の販売開始を計画している。

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