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敗血症診療の費用対効果は経年的に改善傾向、8年分のビッグデータ解析で-千葉大

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2022年08月02日 AM10:43

日本における敗血症患者の医療費の推移は?

千葉大学は7月29日、2010年~2017年の8年間にわたる5000万人以上の日本の入院患者のデータから敗血症患者を抽出し、医療費の年次推移や費用の増減に関わる因子を初めて明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究院の中田孝明教授、医学部附属病院の大網毅彦助教らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Intensive Care」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

敗血症は、細菌やウイルスなどの感染に対して生体が過剰に反応することによって、自らの細胞が傷害された結果として臓器(心臓、肺、腎臓など)機能が低下し、生命に危険が及ぶ状態。海外のデータでは世界中で毎年約3000万人が敗血症に罹患し、そのうちの約3人に1人は著しい臓器障害をきたし、死に至る。集中治療室での治療を乗り越えた患者も、多くが慢性的な臓器障害に苦しんでいる。

、日本感染症学会は、日本国内での敗血症の啓発と対策強化を目的に、Japan Sepsis Alliance(日本敗血症連盟)を立ち上げ、活動の一環としてビッグデータを活用した敗血症診療の実態調査を行なっている。2021年9月、DPCデータを用いた研究として、日本における敗血症患者の死亡率が低下傾向である一方、患者数や死亡数は増加傾向であることを同大大学院医学研究院救急集中治療医学教室が報告している。

2011年に米国での敗血症に係る医療費が2兆円を超え、他疾患と比較して社会的影響が大きな疾患であると報告されている一方、日本では敗血症患者の医療費に注目した研究報告は行われていなかった。他国とは医療システムが異なり海外の報告を参考にしづらい背景もあるため、研究グループは、大規模なDPCデータを用いて日本国内の敗血症に関する医療費の実態調査を行った。

DPCデータから2010年~2017年の敗血症患者を抽出、解析

研究グループは、日本全国の多くの急性期病院で導入されているDPCデータを用いて敗血症患者を抽出した。DPCデータは、日本独自の診療報酬の包括評価制度であるDiagnosis Procedure Combination (DPC)の保険請求に基づくデータベース。敗血症症例を拾い上げるために、2010年~2017年のDPCデータより、1)血液培養を採取し抗菌薬投与を行った患者を重症感染症患者として抽出、その中で2)感染に伴う臓器障害をきたした患者を最終的に敗血症患者と定義して抽出した。

医療費は、薬剤治療や血液検査、画像検査、手術などの処置にかかる費用の総額を算出し、年次推移を評価するために消費者物価指数で各年の医療費を補正した。抽出されたデータから医療費や費用対効果の推移を評価し、患者背景や感染巣(病原微生物が増殖している場所)などとの関連を解析した。

年間の医療費総額「増」、入院一回あたりの医療費と病院滞在日数は「減」

2010年~2017年までの8年間で敗血症患者数は年々増加傾向にあり、敗血症診療にかかる年間医療費の総額は3515億円(2010年)から5050億円(2017年)に増えていた。一方、敗血症患者の入院一回あたりの医療費と病院滞在日数は年々低下傾向にあり、一人の敗血症患者を救命するために必要となった医療費の総額も年々低下傾向で、費用対効果は改善したことがわかった。敗血症患者の入院一回あたりの医療費が年々低下傾向であることや費用対効果が改善している結果は、年齢、感染巣、男女別の解析でも一貫していた。

年齢別の解析では、後期高齢者(75歳以上)の医療費総額の割合が大きく(2010年:47.3%、2017年:50.5%)、後期高齢者の医療費総額の伸び率は、成人や前期高齢者(65歳以上75歳未満)に比べて年々高くなっていることもわかった。

医療費の増減に関わる因子は「入院年度」「慢性疾患」など

敗血症患者の医療費の増減に関わる因子を明らかにするために、敗血症患者の背景や治療内容で調整した解析を行った。その結果、「入院年度」(入院初日が含まれる年度)は医療費の増減に関わる有意な因子であり、経年的に敗血症患者の入院一回あたりの医療費が減少していることが示された。さらに、高血圧や糖尿病などの慢性疾患、集中治療室への入室、病院滞在日数、外科手術などが医療費の増加に寄与していることがわかった。

適切な医療資源の分配を目指す上で重要なデータ

DPCデータを用いて日本の敗血症患者の医療費に関する疫学調査を行った結果、敗血症患者の医療費は年々増加傾向である一方、敗血症診療における費用対効果は経年的に改善していることがわかった。費用対効果が改善している理由として、敗血症ガイドラインの活用などによる診療の質向上が推察された。その一方、超高齢社会に突入している日本では今後医療費の増大が懸念される。

「今回の研究結果は、医療財源使用の適正化に向け、厚生労働省などの行政機関と協働しながら効率的な医療や適切な医療資源の分配を目指す上で重要なデータであると考える。Japan Sepsis  Allianceと連携し、今後も敗血症の啓発と対策強化を目的にして日本の敗血症対策を推進していく」と、研究グループは述べている。

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