高温曝露と高血糖緊急症・低血糖による入院リスクとの関連は?
東京医科歯科大学は7月29日、糖尿病患者が高温環境に曝露されることが糖尿病性ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群、低血糖による緊急入院のリスクと関連することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医歯学総合研究科国際健康推進医学分野の藤原武男教授、医療政策情報学分野の伏見清秀教授、宮村慧太朗大学院生らの研究グループによるもの。研究成果は、「Environment International」オンライン版に掲載されている。
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地球温暖化に伴い猛暑日が増加し最高気温が上昇するなど高温環境に曝露される日が増加しており、高温曝露による疾病リスクの上昇が懸念されている。糖尿病患者における高温曝露による影響として、全死因死亡や入院リスクの上昇が報告されてきたが、具体的な疾病発症のリスクについては明らかにされていなかった。
そこで今回の研究では、高温曝露と、糖尿病患者の致死的な合併症である糖尿病性ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群、低血糖による入院リスクとの関連を明らかにすることを目的とした。
29.9℃での入院リスク比、高血糖緊急症1.64、低血糖1.65
今回の研究では、気温上昇に伴い入院のリスク比の上昇が明らかになった。90パーセンタイルの気温(26.7℃)の場合、高血糖緊急症による入院のリスク比は1.27(95%信頼区間:1.16-1.39)、低血糖による入院のリスク比は1.33(95%信頼区間:1.17-1.52)。99パーセンタイルの気温(29.9℃)の場合、高血糖緊急症による入院のリスク比は1.64(95%信頼区間:1.38-1.93)、低血糖による入院のリスク比は1.65(95%信頼区間:1.29-2.10)となった。なお、いずれも全国日平均気温の75パーセンタイルの気温(22.6℃)を基準としている。
また、高血糖緊急症のタイプ(糖尿病性ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群)、糖尿病病型(1型糖尿病、2型糖尿病、その他の糖尿病)、年齢群(15歳未満、15歳~64歳、65歳以上)、地域によるサブグループ解析においても、概ね同様に高血糖緊急症および低血糖による入院リスクが上昇していたとしている。
これらのデータは、2012~2019年の全国Diagnosis Procedure Combination(DPC)データから高血糖緊急症(糖尿病性ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群)、低血糖による緊急入院時のデータを抽出、気象庁の全国日平均気温データと統合し、気温と入院との関連を3日間のラグ効果を考慮した上で分析した。
高温環境に留意した介入、糖尿病での致死的疾病への予防対策として有用な可能性
今回の研究は高温環境への曝露が糖尿病患者の致死的な疾病である糖尿病性ケトアシドーシス、高血糖高浸透圧症候群、低血糖による緊急入院のリスクと関連することを明らかにした。この研究結果により、高温環境に留意した介入が高血糖および低血糖入院の予防対策として重要である可能性が示唆された。
高血糖緊急症のリスクが高いコントロール不良の糖尿病患者や、HbA1cが低くインスリンを使用しているような糖尿病患者においては、高温環境による血糖への影響を事前に調べ共有し、薬剤を調整するなどの治療介入を積極的に行うことが、致死的な高血糖、低血糖による入院を予防するために有用となる可能性がある、と研究グループは述べている。
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