月経痛の原因「プロスタグランジン」、魚含有のDHA、EPAでその作用は減少?
東北大学は7月20日、魚の摂取頻度と月経困難症(月経痛)との関連に着目し、産後の女性において魚の摂取頻度が「週1回以上」であると、中等度以上の月経痛を有するリスクが低くなる傾向があることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大病院婦人科学分野の横山絵美助教、同周産母子センターの渡邉善講師、東北医科薬科大学医学部衛生学・公衆衛生学教室の目時弘仁教授、近畿大学東洋医学研究所の武田卓教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「PLOS ONE」に掲載されている。
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月経痛は、月経が始まる12歳ごろから閉経前の45歳くらいまでの女性に一般的な婦人科疾患である。月経痛の主な原因として、生理活性物質の一つであるプロスタグランジンの過剰分泌による子宮の過剰収縮や子宮口が狭いことが挙げられる。月経痛は、その痛みにより、しばしば女性の生活の質に大きな悪影響をもたらすため、治療として一般的に痛み止めが服用されている。
近年、魚を摂取すると炎症が抑えられたり、精神疾患の症状が改善されたりする効果が報告されている。これは、魚に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)に抗炎症作用があり、炎症性の痛みの原因ともなるプロスタグランジンの作用を減少させるためと考えられている。
産後1.5年時の女性の28.1%で中等度以上の月経痛
今回の研究は、子どもの健康と環境に関する全国調査(エコチル調査)の一環として実施されたもの。2011年~2014年にかけて日本で行われたエコチル調査の全国データから、宮城ユニットセンターに登録された2,060人の女性を調査対象とし、最終出産から1.5年後に、魚の摂取頻度と月経痛の関連を調査した。
産後1.5年時の月経痛の重症度を調査した結果、産後の女性の28.1%で中等度以上の月経痛があったことがわかった。魚の摂取頻度が「週1回未満」の女性の38.0%が中等度以上の月経痛があるのに対し、魚の摂取頻度が「週1回」の女性では26.9%、「週2~3回」の女性では27.8%、「週4回以上」の女性では23.9%が中等度以上の月経痛があった。
「週1回以上魚を摂取する」女性で中等度以上の月経痛を有するリスクが低い
また、魚の摂取頻度と中等度以上の月経痛があるリスクを解析した結果、魚の摂取頻度が週1回以上の女性は、中等度以上の月経痛を有するリスクが低いことがわかった。この結果は、女性の月経痛と関連性の高い、子宮筋腫や子宮内膜症などの婦人科疾患の既往歴や年齢、学歴、収入など社会経済要因を考慮しても変わらなかった。
魚の摂取頻度が高いと中等度以上の月経痛が少ない傾向が見られるという結果は、魚に含まれるドコサヘキサエン酸(DHA)やエイコサペンタエン酸(EPA)を始め、豊富に含まれるビタミンDやビタミンEなどの栄養素が月経困難症に予防的に働いたと推測された。
産後女性は、定期的に魚を摂取することが推奨される
研究結果から、産後の女性が魚を一定量摂取することにより、月経痛が軽減できる可能性が考えられる。また、魚摂取による健康効果は以前から指摘されており、今回の研究もそれらの報告と矛盾しない。昨今、日本人の魚離れが続いており、世界から見ると逆行している現象となっている。研究グループは、「産後女性は、日頃の食事に魚料理を取り入れるよう心がけることで、苦しい月経痛に悩むことが少なくなると期待できる」と、述べている。
ただし、今回の研究は横断的な検討であり、長期的な予防効果については未解明のため、今後さらなる調査にて検証をする予定としている。
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・東北大学 プレスリリース