未来塾は、現行薬価制度について「実購入価償還でもなく、多数の医療機関購入価保証でもない、薬価差を目指した仕組みでもない。何を目指した制度か、現在は不明確なのではないか」と問題意識を表明。
その中で、薬価差は診療所ではほぼ解消済みの一方で、病院の一部にはまだ残り、大手薬局チェーン、薬局等の共同購入により拡大するという薬価差の偏在を指摘し、「現行薬価制度、制度に起因する現行医薬品流通や価格交渉の仕組みは限界」だとして、現行制度を前提にせず「あるべき姿」として今回提案した。
薬価差を求める購入行動により、薬価引き上げを措置した不採算品も総価交渉などで薬価が下落してしまう現状から、「薬価差を原則として否定していくべきではないか」とし、医療機関ごとの購入価で償還することを提案した。購入価はオンラインで把握し、翌月には薬価改定を行う「随時改定・デジタル改定」の考えを打ち出した。購入価をデジタル報告した施設には、調整幅に代わる保管・損耗コストの手当として技術料加算の仕組みを提案した。
実施に当たっては「カテゴリー別に段階的に導入」とし、まずは薬価差獲得行動により薬価下落、事業経営の悪化、供給不安定化につながりかねない不採算品の制度運用改革から着手する必要性を指摘した。
不採算品は全製品の約3割に上り、その中には基礎的医薬品、安定確保医薬品(カテゴリーA、B)も含まれるという。例示した精製水、解熱鎮痛剤では、原価と流通コストの合計が薬価を上回っている現状を紹介し、不採算品の薬価算定は、原価だけでなく流通コストを含めて手当しなければ安定供給につながらないことを指摘し、運用の改善を求めた。
未来塾の次回提言では、希少疾病用薬品など新薬の薬価・流通上の扱いを取り上げる予定。
これまで日本の製薬産業の地位向上、流通安定化を目指し、新薬の企業届け出制度の創設、特許期間中の薬価維持、そして今回の不採算品の薬価算定の運用見直しと、薬価制度と流通を一体的に捉えて提言を打ち出してきた。
薬剤のカテゴリーに着目した制度運用、薬価差偏在への問題意識を示唆している。その点では、厚生労働省医政局医薬産業振興・医療情報企画課の安藤公一課長が15日の講演で披露した問題意識と重なるところもある。