医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > テクノロジー > スマホアプリ「ドライアイリズム」、良好なドライアイ診断精度を示す-順大ほか

スマホアプリ「ドライアイリズム」、良好なドライアイ診断精度を示す-順大ほか

読了時間:約 1分55秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年07月25日 AM10:19

ドライアイリズムと臨床所見で収集のデータを比較し、信頼性および妥当性を検証

順天堂大学は7月22日、ドライアイ研究用スマートフォンアプリケーション(以下、スマホアプリ)「(R)」を用いて、ドライアイリズムで収集したドライアイ疾患特異的質問紙票ならびに最大開瞼時間の信頼性および妥当性を検証し、ドライアイ診断精度の調査結果を発表した。この研究は、同大大学院医学研究科眼科学の村上晶特任教授、猪俣武範准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The Ocular Surface」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

ドライアイは日本で2000万人以上が罹患する最も多い眼疾患であり、超高齢社会およびウィズ・アフターコロナで助長されるデジタル社会において今後も増加が予想されている。また、ドライアイによる自覚症状は、乾燥感のみならず、羞明(まぶしさ)、眼精疲労、視力低下等多岐にわたる。そのため、不定愁訴とされ治療が行われないまま見逃される場合もあると、研究グループは先行研究により明らかにしてきた。ドライアイの症状は視覚の質や労働生産性の低下につながり、経済的損失への影響もあるため早期発見や早期治療が重要となる。

日本におけるドライアイの診断基準は、「眼不快感・視機能異常などの自覚症状を有し、涙液層破壊時間が5秒以下に低下していること」と定義されている。この涙液層破壊時間の測定は患者の眼表面をフルオレセインで染色し、細隙灯顕微鏡で観察する生体染色検査を実施するため、患者への侵襲・接触を伴う。近年はCOVID-19の蔓延により、非侵襲・非接触的な検査法が求められている。また、遠隔診療・オンライン診療では、細隙灯顕微鏡による涙液層破壊時間の測定ができず、定量的な検査方法が存在しない。

そこで、研究グループではスマホアプリ「ドライアイリズム」を開発し、非侵襲・非接触的な最大開瞼時間と疾患特異的な質問紙票の組み合わせによるドライアイ簡易検査方法の開発を行ってきた。今回の研究では、ドライアイリズムによって収集したデータの信頼性、妥当性および、ドライアイリズムによるドライアイ診断精度を検証した。

今回の研究対象は、2020年7月~2021年5月の対象期間中に順天堂大学医学部附属順天堂医院の眼科外来を受診し、研究同意が得られた20歳以上の患者82名。ドライアイ疾患特異的質問紙票および最大開瞼時間を含むドライアイ検査を行ない、さらにドライアイリズムによるドライアイ疾患特異的質問紙票および最大開瞼時間を測定し、収集したデータの比較を行った。

ドライアイリズムによる診断精度、従来法と有意な正の相関を認め、感度71.4%特異度87.5%

収集したデータを解析した結果、82名の研究参加者のうち、42名がドライアイ患者だった。ドライアイリズムで収集したドライアイ疾患特異的質問紙票は良好な内部一貫性を示した(Cronbach‘s α=0.874)。ドライアイ疾患特異的質問紙票の結果に関する測定結果の相関及び一致性に関しては、紙およびドライアイリズムの測定結果の間に有意な正の相関を認め(Pearson相関分析、r=0.891、P<0.001)、Bland-Altman分析による一致性の評価では、紙による測定結果に対するドライアイリズムによる測定結果のバイアスは3.95点(95%許容範囲:-13.8から21.7)だった。

さらに、最大開瞼時間の測定結果に関する相関及び一致性に関しては、細隙灯顕微鏡およびドライアイリズムによる測定結果の間に有意な正の相関を認め(Pearson相関分析、r=0.329、P=0.003)、Bland-Altman分析による一致性の評価では、細隙灯顕微鏡による測定結果に対するドライアイリズムによる測定結果のバイアスは-3.62秒(95%許容範囲:-13.8から21.7)だった。

そして、日本の診断基準に則ったドライアイ診断に対するドライアイリズムのドライアイ診断精度はReceiver Operating Characteristic(ROC)解析によるROC曲線下面積が0.910であり、最大開瞼時間のカットオフ値を21.4秒とした場合、感度71.4%、特異度87.5%という精度を認めた。

以上の結果から、ドライアイリズムはドライアイを評価するための信頼性の高い有用な手段であるとともに、ドライアイの診断補助を行うための新たな非侵襲・非接触的な手段となりうることが示唆されたとしている。

今後は多機関での共同研究実施を予定、医療機器承認・保険償還を目指す

今回の研究では、ドライアイリズムで収集したデータの信頼性・妥当性を示し、さらにドライアイリズムによる良好なドライアイ診断精度を示すことに成功した。スマホアプリによって非接触・非侵襲的にドライアイの診断補助が可能となれば、ドライアイ患者の早期診断、早期治療や遠隔診療やオンライン診療でのドライアイ診療の橋渡しとなる可能性がある。

同研究は順天堂大学医学部附属順天堂医院を受診した患者による単施設での研究だったため、今後は多機関での共同研究の実施を予定しているという。将来的にはドライアイ診断用スマホアプリの医療機器承認および保険償還を目指し、眼科クリニックや病院での実用化による社会実装を行う、と研究グループは述べている。

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 テクノロジー

  • FACEDUO「認知症ケア支援VR」発売-大塚製薬ほか
  • モバイル筋肉専用超音波測定装置を開発、CTのように広範囲描出可能-長寿研ほか
  • ヒトがアンドロイドの「心」を読み取り、動きにつられることを発見-理研
  • 生活習慣病の遺伝的リスクと予防効果の関係、PRS×AIで評価-京大ほか
  • 精神的フレイル予防・回復支援「脳トレシステム」開発-愛知産業大ほか