医療従事者の為の最新医療ニュースや様々な情報・ツールを提供する医療総合サイト

QLifePro > 医療ニュース > 医療 > BA.5を含むオミクロン株に対する新型コロナ治療薬の効果の検証結果-東大医科研ほか

BA.5を含むオミクロン株に対する新型コロナ治療薬の効果の検証結果-東大医科研ほか

読了時間:約 2分10秒
このエントリーをはてなブックマークに追加
2022年07月22日 AM10:30

BA.2.12.1、BA.4、BA.5系統に対する有効性を検討

東京大学医科学研究所は7月21日、臨床検体から分離した新型コロナウイルス・ BA.2.12.1、BA.4、BA.5系統に対する治療薬の効果を検証し、その結果を発表した。この研究は、同研究所ウイルス感染部門の河岡義裕特任教授らと国立感染症研究所、国立国際医療研究センターが共同で行ったもの。研究成果は、「New England Journal of Medicine」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

2021年末から始まった新型コロナウイルス変異株・オミクロン株の流行は現在も続いている。オミクロン株は、5つの系統(BA.1、BA.2、BA.3、BA.4、)に分類される。オミクロン株の流行が始まってから数か月間は、BA.1系統に属する株が世界の主流だったが、その後BA.2系統への置き換わりが進み、同系統が世界の主流となっている。しかし、7月以降、国内を含む多くの国々でBA.2系統からBA.5系統への置き換わりが急速に進んでいる。海外では、BA.2系統からBA.4系統あるいはBA.2.12.1系統への置き換わりが進んでいる地域がある。

国内では、カシリビマブ・(製品名:ロナプリーブ注射液セット)、ソトロビマブ(製品名:ゼビュディ点滴静注液)の抗体薬、レムデシビル(製品名:)、モルヌピラビル(製品名:ラゲブリオ)、ニルマトレルビル・リトナビル(製品名:)の抗ウイルス薬が新型コロナウイルス感染症(COVID-19)に対する治療薬として承認を受けている。しかし、これらの治療薬がオミクロン株のBA.2.12.1、BA.4、BA.5の各系統に対して有効かどうかについては、明らかではなかった。

抗体薬は種類により効果に差、ベブテロビマブは各系統いずれに対しても高い中和活性

研究グループは始めに、4種類の抗体薬(ソトロビマブ、ベブテロビマブ、カシリビマブ・イムデビマブ、チキサゲビマブ・シルガビマブ)がオミクロン株のBA.2.12.1、BA.4、BA.5の各系統の感染を阻害(中和活性)するかどうかを調べた。

各系統に対する中和活性は、ソトロビマブではどの系統に対しても著しく低いことがわかった。カシリビマブ・イムデビマブとチキサゲビマブ・シルガビマブは、いずれに対しても中和活性を維持していることが判明した。しかし、カシリビマブ・イムデビマブのBA.2.12.1、BA.4、BA.5の各系統に対する効果は、従来株(中国武漢由来の株)に対する効果と比較すると著しく低いことがわかった。チキサゲビマブ・シルガビマブの効果も従来株に対する効果と比較すると低下していた。

一方、ベブテロビマブは各系統いずれに対しても高い中和活性を示し、その効果は、従来株に対するそれと同等であることがわかった。

3種はいずれも、各系統の増殖を抑制

3種類の抗ウイルス薬(レムデシビル、モルヌピラビル、ニルマトレルビル)の効果を解析した結果、全ての薬剤がBA.2.12.1、BA.4、BA.5の各系統の増殖を効果的に抑制することがわかった。

研究グループは、「得られた成果は、医療現場における適切なCOVID-19治療薬の選択に役立つだけでなく、オミクロン株の各系統のリスク評価など、行政機関が今後の新型コロナウイルス感染症対策計画を策定、実施する上で、重要な情報となる」と、述べている。(QLifePro編集部)

このエントリーをはてなブックマークに追加
 

同じカテゴリーの記事 医療

  • 視覚障害のある受験者、試験方法の合理的配慮に課題-筑波大
  • 特定保健指導を受けた勤労者の「運動習慣獲得」に影響する要因をAIで解明-筑波大ほか
  • 腎疾患を少ないデータから高精度に分類できるAIを開発-阪大ほか
  • ジャンプ力をスマホで高精度に計測できる手法を開発-慶大ほか
  • I型アレルギーを即座に抑制、アナフィラキシーに効果期待できる抗体医薬発見-順大ほか