安藤氏は、医薬品の品質・安定供給確保に向けた流通制度、薬価制度のあり方などを議論する有識者会議の立ち上げについて説明した上で、現行の薬価制度に対する私見を述べた。
薬価制度について、市場の中で適切に医薬品の価値を評価し、市場実勢価格に基づいて改定する仕組みとしつつ、「実際にこの思惑通りに改定されているか、立ち止まって考える必要がある」と問題提起した。
具体的には、薬価差や薬価差の偏在問題を是正する取り組みを進める必要があるとして、市場実勢価格に基づいた改定をベースとしつつ、「本当に全品目に当てはめていくかも考えるべき問題」とした。特許期間が切れるまで薬価を維持する新薬創出等加算制度に対しても、「そもそも価格が改定されていないことを前提としている制度が馴染むのか」と疑問を呈した。
また、市場実勢価格方式のもとで、医療上の必要性が高い医薬品を他の医薬品と同列に扱うべきかも議論の必要があるとした。
その上で、安藤氏は「少しでも現状の課題、環境変化に即した制度に持っていくため、検討を深めたい」とした。
有識者会議の具体的検討内容やスケジュールに関しては、「準備段階なので確定的なものを示すのは難しいが、今夏の終わりまでには立ち上げて議論をスタートしたい」と述べた。
一方、複数の後発品メーカーによる製造工程上の不正事案を発端とした医薬品の供給不安問題にも言及。
問題発生後の厚労省の対応策として、一定以上の供給量を満たした医薬品の出荷調整解除、医療機関・薬局に対して必要最低限の発注にとどめるよう要請したことなどに触れ、安藤氏は「これら暫定的な対応では、今後も供給問題が起こる」と懸念を示した。
米国や欧州では、供給問題発生時に、法律に基づいてメーカーが規制当局に報告し、規制当局は情報整理した上で医療現場に提供しているとして、「きちんと制度にビルトインした上で、体系的な形で対応したい」と国内でも法律を根拠とした制度整備が必要との考えを示した。
サプライチェーンの面では、原薬の国産化促進に向け、抗菌薬のセファゾリンに関する取り組み、企業の製造設備に対する支援策などを説明した。安藤氏は、「100%国産化するのは無理だ。安価な中国産が市場にある中で、経済的合理性に反する取り組みを進めることがこの問題の最も難しいところ」と述べた。
2021年に国が策定した医薬品産業ビジョン2021にも触れ、「大きなKPIを打ち上げて、目標に基づいて取り組みの進捗を見ることを考えている」とした。
5月に成立した経済安全保障推進法では、医薬品など国民生活に不可欠な物資の安定確保・供給を目的としているが、安藤氏は「医薬品は特定重要物資の候補となっているが、医薬品の中の何を位置づけるかがこれからの検討課題」とした。