葛葉里奈氏(札幌花園病院薬局)は、精神科病院におけるRPA活動の現状を報告した。同院は常勤薬剤師が2人と人手不足の状況にあり、パソコン操作に得意意識を持っていない薬剤師も多かった。こうした中、できるだけ業務を自動化することで作業の実施時間短縮と安全性の向上を目指し、RPA活動の検討を始めた。
RPA活動を開始するに当たって、マイクロソフトエクセルのVBA(ビジュアルベーシックアプリケーション)を使ってマクロを作成した。
具体的には、治療抵抗性統合失調症と診断された患者に処方している「クロザリル錠」の事例を示した。同錠の処方にはクロザリル患者モニタリングサービス(CPMS)に登録が必須で、重篤な副作用防止のため定期的な血液検査の実施を義務づけられている。
同院では、血液検査の実施漏れが発生しないよう事前に3カ月ほど先までの採血スケジュール表を作成して管理していたが、負担の大きい作業となっていた。そこで、採血スケジュールに関わる業務の一部をRPA活動の対象として検討を行ったという。
葛葉氏は「業務の合間に作成する負担は大きい」としながらも、「RPAはパソコン操作が不慣れな薬剤師の業務発展につながる有用なツール。このツールを今後も育てていきたい」と語った。
飯田優太郎氏(岩切病院メディカルIT管理部・薬剤部)は、中小病院におけるRPA活動について、システムの導入はメリットが大きいもののコストが高いことから、自作に至った経緯を紹介。自作のシステムはエクセルやアクセス、ファイルメーカーなどを使用して安価に作成でき、施設の業務内容に沿った仕様が可能になるなどのメリットがある一方、「担当者が限られるケースが多い」と課題を指摘した。
その上で、患者IDの統合作業や薬剤管理指導記録の自動作成に導入した事例を示し、システム構築にはアルゴリズムの構築が重要と指摘。「データベースはシステムの根幹であり、DI担当薬剤師の力が試される」と訴え、「システム担当者の負担軽減が安定したシステム運用のカギ」との考えを示した。
佐藤弘康氏(JA北海道厚生連帯広厚生病院薬剤部)は、RPA導入のメリットとして、薬剤師の担当や経験に関わらず一定の質で出力が担保でき、抜けやミス防止につながること、作業時間を効率化して単純作業の分を複雑な業務に集中できることなどを挙げた一方、構築できる人材が限られるなどの課題を列挙。「まずは小規模なRPAをできる範囲から行い、小さな成功体験を積み上げることが重要」と述べた。
佐藤氏は、RPAの活用によって「業務を減らすのではなく、効率化する」ことにより、空いた時間を対人業務に充てることが望ましいとの考えを示し、「RPAが有用なツールとして活躍できる」と主張した。