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膀胱がんを尿エクソソームから高精度に診断、患者負担の軽減に期待-NIBIOHNほか

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2022年07月12日 AM11:10

膀胱鏡検査は患者負担が大きく、尿細胞診は精度が問題となっていた

(NIBIOHN)は7月8日、膀胱がん患者の尿中に分泌される細胞外小胞()の膜タンパク質「EphA2(エフエーツー)」を測定することで膀胱がんを診断する、新たな検査法を確立したと発表した。この研究は、同プロテオームリサーチプロジェクト、近畿大学医学部泌尿器科学教室の藤田和利准教授、大阪大学大学院医学系研究科からなる共同研究グループによるもの。研究成果は「British Journal of Cancer」誌にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

膀胱がんは日本で年間約2万5,000人が発症し、早期に診断された場合は根治も可能だが、進行して見つかると予後が非常に不良であり、早期診断が特に重要である。しかし、診断に用いられる膀胱鏡による検査は、刺激の強さから患者負担が大きいだけでなく、費用も高く、スクリーニング検査には適していない方法である。また、膀胱がんは血尿を契機に発見されることが多いが、検診などで血尿を指摘されても、膀胱がんと診断される確率はわずか0.5%であり、負担の大きい膀胱鏡検査が多くの患者に不要に行われているのが現状となっている。他には、尿中にこぼれ落ちた細胞を専門の病理診断医が観察して診断する尿細胞診も、膀胱がんの診断法として一般的に用いられるが、正しく診断される確率は約30%程度と低く、がんの見逃しが問題となっている。そのため、患者負担が少なく、かつ高精度に膀胱がんを診断できる検査法の開発が待ち望まれている。

尿中に分泌するエクソソームタンパク質「EphA2」を診断マーカーとし、検出する測定系を開発

研究グループは、膀胱がんが尿中に分泌するエクソソームという物質に着目した。エクソソームとは、あらゆる細胞が体液中に分泌する細胞外小胞の一種で、細胞同士の情報伝達に用いられ、分泌元の細胞由来の分子が含まれるため、がん由来のエクソソームを研究することで、がんの診断や治療効果判定に利用できると近年期待されている。また、研究グループは先行研究において、尿中に含まれるエクソソーム表面のタンパク質と、がん組織から直接培養液中に分泌させたエクソソーム表面のタンパク質を質量分析により網羅的に解析することで、両者の大部分が重複していることを確認し、尿が膀胱がん由来のエクソソームを検出するのに適切な体液であることを報告していた。今回の研究では、複数の候補タンパク質について質量分析で定量を行い、血尿や膀胱炎で上昇しない尿中エクソソームタンパク質を絞り込んだ。そのうえで、診断マーカー候補タンパク質の中で特に有望であった尿中エクソソームタンパク質「EphA2」に着目した。

尿中エクソソームの主要な回収法は超遠心法とされるが、高額な機械(超遠心機)を必要とし、時間もかかることから、臨床現場での使用は現実的ではない。研究グループは臨床応用可能な測定系の開発を行うべく、エクソソームの回収にPSアフィニティー法を採用した。これは、エクソソーム膜面のホスファチジルセリンに結合するTim4タンパク質を利用した技術で、高純度なエクソソームを短時間で回収することが可能だという。研究グループは、PSアフィニティー法により尿5mlからエクソソームを回収し、プレートに固体化したEphA2抗体でEphA2陽性エクソソームを捕捉し、エクソソームの表面マーカーであるCD9に対する抗体でエクソソームを検出するELISA法による測定系(EXO-EphA2-CD9 ELISA)を開発した。

既存の検査方法よりも高感度かつ短時間で診断可能

この測定系により、尿からのエクソソーム回収およびエクソソームタンパク質表面のEphA2の測定までを簡便に行うことが可能となった。本検査法の膀胱がん診断を、72人の尿(膀胱がん患者36例、血尿や膀胱炎患者を含む非膀胱がん患者36例)を用いて評価したところ、感度(病気を言い当てられる確率)が61.1%、特異度(間違えて病気だと診断してしまわない確率)が97.2%と優れた診断能を示した。

現在膀胱がんのスクリーニング検査として一般的に用いられている尿細胞診の感度が50%に留まるのと比較しても、今回開発した検査方法が尿細胞診のみでは見落とされがちな早期膀胱がんの検出において、尿細胞診よりも優れることがわかった。また、尿細胞診が病理診断医の習熟度に依存し、結果を得るのに1週間程度を要するのに対し、本検査は数時間で診断可能である点でも優れた検査法だと言える。なお、尿細胞診と本検査を組み合わせた場合、感度80.6%、特異度97.2%と診断能はさらに向上し、尿細胞診と本検査を同時に行うことで、膀胱がんの診断能が向上する可能性も示唆された。

患者の身体的、経済的負担を軽減することができると期待

今回の研究では、膀胱がん患者と非膀胱がん患者の尿中エクソソームのタンパク質について、質量分析器を用いて網羅的に解析することで、膀胱がん患者の尿中では「EphA2」というタンパク質が増加することを発見し、これを膀胱がんの新規診断マーカーとして同定した。さらに、尿からのエクソソーム回収にPSアフィニティー法を用いることで、尿中エクソソーム表面のEphA2を簡便に測定する検査法の確立にも成功した。「研究結果により、膀胱がんの診断時や経過観察時に繰り返し行われる膀胱鏡検査を減らし、患者の身体的、経済的負担を軽減することができると期待される」と、研究グループは述べている。

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