訪問診療実施の医師を対象に、新型コロナ流行後に在宅医療希望の患者数と理由を調査
筑波大学は7月11日、COVID-19の流行前と比べて「自宅で最期を迎えたいと考える患者」「新たに在宅医療(訪問診療)を希望する患者」が増えたことが明らかになったと発表した。この研究は、同大医学医療系の濵野淳講師らの研究グループによるもの。研究成果は、「BMC Research Notes」に掲載されている。
COVID-19の「第5波」(2021年7~9月)では、それまでの状況を大きく上回る感染爆発となった。これにより、感染者を受け入れる病床を確保するために、一般入院の病床数が減ったり、入院中の面会が制限され、以前は入院治療を受けられていた慢性疾患を抱える人が、在宅で療養することも多くなっていると言われていた。しかし、在宅医療(訪問診療)を希望する患者数の実態や、その変化の理由については明らかになっていなかった。
そこで研究グループは、2021年8月に国内で訪問診療を行っている医療機関の医師を対象に、COVID-19の流行前と比較した在宅医療(訪問診療)利用状況の変化の実態や、考えられる理由などを調査した。
在宅医療を希望する人の9割以上が「入院中の面会制限」を理由に在宅医療を希望
研究では、訪問診療を行っている国内37施設の責任医師(院長や管理者など)を対象に、COVID-19の流行前と比べた「依頼される在宅患者数」や「病状」「患者・家族が在宅医療(訪問診療)を希望する理由」などについて、2021年8月に無記名のwebアンケート調査を実施した。なお、この時期は、21都道府県で緊急事態宣言が発令されていた。
33施設からの回答のうち、未入力データがあった2施設を除いた31施設のデータを解析した。そのうち14施設は人口10万人未満の地域にあり、9施設では医師1人体制で訪問診療を担当していた。
解析の結果、COVID-19の流行前と比べて「自宅で最期を迎える患者が増えた(74.2%)」、「新たに在宅医療(訪問診療)を希望する患者が増えた(71.0%)」という傾向が明らかになった。また、その理由として、回答者の93.5%が「入院中の面会制限があるため、多くの患者、家族が在宅医療(訪問診療)を希望している」と考えていることがわかった。
在宅医療従事者の支援や、入院中の面会制限の運用改善の検討が必要
これらの結果は、地域の人口や診療所・クリニックの医師数による違いが見られなかったことから、日本における一般的な傾向と考えられる。したがって、COVID-19の流行前と比べて増えている、在宅医療(訪問診療)を希望する患者に対応している在宅医療従事者の支援や、入院中の面会制限の運用改善の検討が必要であることが示唆される。
COVID-19流行下での適切な医療サービス提供への活用に期待
今回の研究は、COVID-19の流行前と比べた在宅医療(訪問診療)利用状況の変化の実態や、考えられる理由について分析した初めての調査となる。
「本研究結果が、COVID-19の感染拡大において、患者、家族に適切な医療サービスを提供するために活用されていくことが期待される」と、研究グループは述べている。
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・筑波大学 TSUKUBA JOURNAL