実行計画は、将来的な癌と難病の克服を目指し、全ゲノム解析の結果を研究・創薬に活用するために取り組むべき事業を記したもの。難治性癌、希少癌、小児癌、遺伝性癌など全ゲノム解析による一定の効果が見込まれる一方、民間だけでは研究・創薬が困難な癌種を対象としている。
厚労省がこの日の専門委員会で示した具体案では、事業実施体制として、基本的方向性を専門委員会で決め、事業実施組織が具体的運用を担うとした。事業では、医療機関、シークエンス企業、解析・データセンター、産業界・アカデミアと連携し、患者還元やデータ利活用を促進する。
解析結果を創薬に活用するための基本戦略として、解析データを用いた創薬が活性化される環境整備が重要と指摘。国内外の研究機関、企業の研究者が解析情報をオープンに利用できる体制を整備するため、産業フォーラムとアカデミアフォーラムを構築し、事業実施組織がこれらの連携支援を行う。
また、実行計画が解析対象とする癌をメインターゲットとして、基礎から臨床まで一気通貫のアカデミアと企業の共同創薬や共同臨床試験、人工知能(AI)を用いた質の高い診断・治療体制を確立し、癌の進行度に関わらず根治可能な治療法の開発を目指すとした。
これまでの取り組みを踏まえた基本方針では、22年度は新たに同意を得た患者約4500症例(癌領域2000、難病領域2500)の解析と患者還元を行う予定とし、23年度以降は専門委員会が承認した医療機関と連携して癌ゲノム医療体制を確保する医療機関の参加を検討するなど、段階的に体制整備する。
解析・データセンターに関する人材育成の必要性にも言及し、生命情報学、情報セキュリティ、臨床遺伝学など多様な専門性を持った人材が必要とした。
倫理的・法的・社会的課題(ELSI)の項目では、事業実施組織に専門部門を設けて専門性を備えた人材を配置。ELSIに配慮しながら計画を実行するために必要な取り組みを検討し、対応する。
患者・市民参画に関する項目では、事業実施組織に患者・市民参画部門を設置するほか、計画に参画する研究機関・医療機関にも患者等の視点を取り入れる体制を作る。