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骨粗しょう症、CDK8阻害剤が新規治療薬候補となる可能性-岐阜薬科大ほか

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2022年07月11日 AM10:34

間葉系幹細胞が破骨細胞の骨吸収を制御するメカニズムは?

岐阜大学は7月1日、CDK8阻害剤が新しい骨粗しょう症治療薬となる可能性を見出したと発表した。この研究は、岐阜薬科大学薬理学研究室の山田孝紀博士研究員、深澤和也助教、・岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科の檜井栄一教授ら、京都薬品工業株式会社、東京医科歯科大学の研究グループによるもの。研究成果は、「Stem Cell Reports」オンライン版に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

骨は、生涯にわたって新陳代謝を繰り返すことで、常に新しく作り替えられている。この過程において、破骨細胞は古くなった骨を壊し、骨芽細胞は新しい骨を造る。しかし、このバランスが崩れると、ロコモティブシンドロームの原因疾患の一つである骨粗しょう症が引き起こされる。特に、加齢や閉経は骨粗しょう症の発症リスクを高めることが知られている。したがって、骨粗しょう症に対する画期的な予防・治療法の確立は、超高齢社会を迎えた日本における喫緊の課題と言える。

近年、間葉系幹細胞が破骨細胞の機能を制御することがわかってきた。しかし、間葉系幹細胞がどのようなメカニズムを介して、破骨細胞の骨吸収を制御しているのかについては、よくわかっていなかった。

間葉系幹細胞で加齢とともにCDK8発現が増加

加齢は、骨粗しょう症の発症リスクを高めることが知られている。研究グループはまず、「加齢により、間葉系幹細胞においてどのような因子の発現が変動するのか?」をシングルセルRNA-seq解析により検討した。その結果、間葉系幹細胞において加齢とともにCDK8の発現が増加することがわかった。

間葉系幹細胞特異的CDK8欠損マウス、破骨細胞の数や機能が低下

次に、「間葉系幹細胞のCDK8は骨の恒常性維持に関係しているのか?」を検討。研究グループは、間葉系幹細胞特異的にCDK8を欠損させたマウス(以下、間葉系幹細胞特異的CDK8欠損マウス)を作製し、その表現型の解析をした。その結果、間葉系幹細胞特異的CDK8欠損マウスでは、骨量が増加していることがわかった。

さらに、詳細な解析を行ったところ、間葉系幹細胞特異的CDK8欠損マウスでは破骨細胞の数や機能が低下していることが明らかになった。すなわち、間葉系幹細胞のCDK8は破骨細胞による骨吸収を調節することで、骨の恒常性維持に重要な役割を果たしていると考えられた。

、STAT1-RANKLシグナル経路を調節で破骨細胞機能を制御

次に、「どうして間葉系幹細胞のCDK8の働きを抑えると、破骨細胞の機能が低下するのか?」という疑問を解決することにした。CDK8欠損間葉系幹細胞について、詳細な解析を行ったところ、タンパク質STAT1の機能が低下していることがわかった。STAT1は、遺伝子RANKL発現を促進することで、破骨細胞の機能を調節していることが知られている。したがって、間葉系幹細胞のCDK8は、STAT1-RANKLシグナル経路を調節することで、破骨細胞の機能を制御していると考えられた。

新規CDK8阻害剤KY-065、骨粗しょう症による骨量低下を抑制

最後に、研究グループは、本研究で得られた知見の社会実装を見据え、「CDK8の働きを抑える薬を使って、骨粗しょう症を治療することができるか?」という課題に取り組んだ。以前、研究グループは、CDK8阻害剤KY-065を開発しており、この薬剤が脳腫瘍の治療薬となることを報告している。骨粗しょう症モデルマウスにKY-065を投与したところ、骨粗しょう症による破骨細胞の過剰な活性化と骨量の減少が大幅に抑制されることが明らかとなり、CDK8阻害剤が新規骨粗しょう症治療薬となる可能性が示唆された。

今回の研究では最初に、シングルセルRNA-seqを用いた網羅的かつ客観的なスクリーニングにより、間葉系幹細胞のCDK8が骨粗しょう症に対する新規創薬標的候補となることを見出した。その後、遺伝子改変マウスや培養細胞を効果的に活用することで、創薬標的の蓋然性を確認した。最後に、研究グループが独自に開発したCDK8阻害剤KY-065の骨粗しょう症治療薬としての有効性を実証した。

以上のように、研究グループは、データ駆動型サイエンスの実践、遺伝子改変マウス・細胞を用いたin vivo/in vitro 実験、阻害剤を用いた薬理学的検証を行うことで、間葉系幹細胞を標的とした新規骨粗しょう症治療戦略の基盤確立に成功したとしている。

骨粗しょう症に限らず、広く運動器疾患や骨系統疾患の治療法につながることに期待

今回の研究は、間葉系幹細胞のCDK8が有望な骨粗しょう症創薬ターゲットになることを細胞・生体レベルで明らかにした世界初の報告となる。同研究成果は、骨粗しょう症に限らず、破骨細胞活性化異常や、骨組織の恒常性維持の破綻によって引き起こされるさまざまな運動器疾患や骨系統疾患に対する革新的治療法を提供し、アンメット・メディカル・ニーズの解消にも貢献することが期待される、と研究グループは述べている。

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