肝臓・脳・腸をつなぐ自律神経経路が、どのようにNAFLDの病態に関わるのか?
新潟大学は7月6日、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD)の病態進行に肝臓のセロトニンの受容体が関与すること、その受容体拮抗薬投与が有効な新規治療法になり得ることを解明したと発表した。この研究は、同大医学部医学科総合診療学講座/大学院医歯学総合研究科消化器内科学分野の上村顕也特任教授、同分野の大脇崇史大学院生、寺井崇二教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Disease Models & Mechanisms」に掲載されている。
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NAFLDには、生活習慣、遺伝的素因、環境因子を含むさまざまな要因が複雑に関与することが報告されている。研究グループはこれまでに、NAFLDの病態に自律神経を介する肝-脳-腸連関が関与し、セロトニンやグレリンなどの消化管ホルモンの働きで、腸内細菌叢、短鎖脂肪酸、腸管バリア機能や下垂体ホルモンに影響して、NAFLDの進行に関与することを明らかにしていた。
セロトニンの受容体は、全身のさまざまな臓器や組織に存在し、いろいろな機能を担っている。しかし、自律神経路を介した肝-脳-腸連関の活性化に伴うセロトニン分泌が肝臓のセロトニン受容体を介して、どのようにNAFLDの病態に関わるのかは解明されていなかった。そこで研究グループは今回、この課題を解明するため研究を行った。
脂肪食<小腸からセロトニン分泌<肝臓に到達<セロトニン受容体<NAFLDの病態に関与
今回、NAFLDの病態進行と、自律神経経路を介するセロトニンおよびその肝臓での受容体(Htr2a)の発現、脂肪合成関連の遺伝子発現の変化を検討した。また、肝臓に起始する自律神経経路の遮断によって、NAFLDの病態が制御できるか検討した。さらに、肝細胞表面のHtr2a拮抗薬により、病態の制御が可能か検討した。
中枢性に食欲制御が困難なマウス(NAFLDモデルマウス)を用いて、自律神経経路の制御、Htr2a拮抗薬が有効か検討したところ、脂肪食の給餌により、小腸からのセロトニンおよびHtr2aの発現は上昇し、肝臓からの求心性交感神経の遮断によって、その変化が軽減。さらに、その受容体の下流では、中性脂肪合成に関わる遺伝子の発現が低下した。
NAFLD患者は血清セロトニン濃度が病態の進行に伴い低下、Htr2a拮抗薬の有効性も確認
また、これらの結果は、NAFLDモデルマウスにHtr2a拮抗薬を投与することで再現されたという。さらに、NAFLDモデルマウス、NAFLD患者の血清セロトニン濃度がNAFLDの進行に伴って低下することも明らかとなり、病態進行の指標にもなり得ることが示唆された。
今後、中枢性の食欲制御と末梢自律神経系の関連性の解明が必要
今回の研究結果から、NAFLD患者において、自律神経経路を介したセロトニンおよびその受容体の調節がNAFLDの進行抑制に有用である可能性が示唆され、有効な新規治療薬の開発につながることが考えられた。
「この効果は脳内で食欲が制御できないマウスでは弱く、今後、中枢性の食欲制御と末梢自律神経系の関連を解明する必要がある」と、研究グループは述べている。
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