世界最大規模の登録症例数、臨床像や予後、心イベントとの関連因子を調査
北里大学は7月4日、心臓サルコイドーシス患者に関する世界最大規模の多施設レジストリデータを構築、解析し、その臨床像、心イベント発生率、心イベントとの関連因子を明らかにしたと発表した。この研究は、同大医学部循環器内科学の鍋田健助教、国立循環器病研究センター心臓血管内科の北井豪医長、順天堂大学大学院医学研究科循環器内科学の末永祐哉准教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「European Heart Journal」にオンライン掲載されている。
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サルコイドーシスは、体内の複数の臓器に原因不明の炎症が生じ、その炎症を起こした細胞が肉芽腫をつくる病気とされている。この肉芽腫が心臓にできた場合を心臓サルコイドーシスと呼び、心不全や致死性の不整脈といった心臓の症状を引き起こすことが知られている。比較的まれな疾患であることから、これまでの報告は国内外併せても小規模のものしかなく、実際の心臓サルコイドーシス患者の実態は明らかではなかった。
そこで同研究では、国内で心臓サルコイドーシスの患者治療にあたる33施設が協力し、現在の診断基準に基づいて診断された心臓サルコイドーシス症例の患者の特性やその経過に関するデータを集約して解析。これまでその実態がほぼ不明であった心臓サルコイドーシス患者の臨床像や予後、さらには心イベントとの関連因子を調査することを目的とした。
国内の参加施設から同研究に登録された心臓サルコイドーシス患者データは512例。これは、現時点で心臓サルコイドーシスを登録した研究では世界最大規模になるという。患者は平均年齢62歳、36%が男性であり、診断のきっかけとして最も多かったものは心臓超音波検査での異常所見だった。心臓MRIやFDG-PETの結果からは心室中隔基部及び中部が心臓サルコイドーシスの好発部位である可能性が示された。
心イベントが経過中に高頻度で生じ、不整脈発症は他イベントの約2倍
診断後の経過では、全死亡、致死性不整脈(心室細動・持続性心室頻拍・植え込み型除細動器の適正作動)、心不全入院で構成される「複合心イベント」が5年で31.0%、10年で48.1%と高頻度で発生していることが明らかになった。特に、致死性不整脈は他のイベントの約2倍の頻度で発生しており、心臓サルコイドーシス治療において致死性不整脈への対応が重要であることが示された。
心イベントの独立した関連因子は、診断時の脳性ナトリウム利尿ペプチド高値、左室駆出率低値など
また、多変量解析の結果では、診断時の脳性ナトリウム利尿ペプチド高値、左室駆出率低値、心室細動・持続性心室頻拍の既往、そして診断後の心室性不整脈に対するアブレーション治療が行われたことが心イベントの独立した関連因子として示された。
心臓サルコイドーシスへのより良い診断、治療の開発へ
今回の研究により、現状の心臓サルコイドーシスの臨床像、予後、そして心イベント関連因子が明らかとなった。今後はさまざまな角度からさらなる解析を行うと同時に、同研究成果を元に心臓サルコイドーシス患者に対するより良い診断、治療の開発へとつなげていく予定だと、研究グループは述べている。
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・北里研究所 プレスリリース