厚生労働省は6月29日、諸外国で感染事例が報告されているサル痘に関する追加対策を厚生科学審議会感染症部会に示した。国立国際医療研究センターや自治体との連携が円滑に実施できる医療機関を参加施設に加えて治療薬の臨床研究を実施し、関東周辺以外で患者が発生した場合に備えるほか、接触リスクの高い医療従事者のうち、希望者に曝露前に天然痘ワクチンを接種することも検討する。
サル痘は、サルなどウイルスを保有する動物と接触すること、性的接触を含めて感染者と接触することで感染する。平均12日間の潜伏後、発熱、頭痛、水疱、膿疱等が発現し、2~4週間後に自然軽快するが、重症化する場合もある。天然痘ワクチンによって約85%発症予防できるとしている。
6月22日時点で、英国やスペインなど50の国・地域で3413件の発症が報告されているが、国内では未確認とされている。
既に厚労省は、国際医療研究センターで、患者に接触した人に天然痘ワクチンを投与する臨床研究体制のほか、患者に対してはサル痘治療薬を投与する臨床研究体制を構築するなどの対策を取っているが、この日の部会では追加対策を説明した。
治療薬については、関東周辺以外でも投与可能となる研究体制の検討が必要として、人口の多い大都市圏で国際医療研究センターと自治体が円滑に連携できる医療機関を研究参加施設に追加することを検討する。投与対象者として、治療薬の安全性・有効性を確認する観点から、当面は臨床研究の枠組みで投与する。
曝露前の予防策では国際医療研究センターの医療従事者に対象とした天然痘ワクチンを接種する臨床研究を準備中とした。
今後、天然痘ワクチンを製造販売する製薬企業にサル痘の追加適応承認の取得に向けた働きかけを行った上で、患者の入院を担当する人、地方衛生研究所の検査担当者、保健所職員など「接触リスクの高い人」のうち、希望者への曝露前接種について検討する。
山田章雄委員(東京大学名誉教授)は、50代以上の人は予防接種で天然痘に対する免疫を保有している人が多いとして、「免疫を持っている人が最前線で業務分担する体制を整備すれば、曝露前の免疫を慌てて付与する必要はない」としたが、委員会は厚労省の対策案を了承した。