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日本人血液透析患者、新型コロナワクチン接種後の抗体価上昇抑制-横浜市大ほか

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2022年06月29日 AM10:19

血液透析を受けている進行慢性地蔵病患者はコロナの重症化・死亡リスクが高い

横浜市立大学は6月28日、新型コロナウイルスワクチン(ファイザー社)接種後に獲得される抗スパイクタンパク質抗体について、抗体価の経時的な推移を血液透析患者群と医療スタッフ群で比較した結果、血液透析患者群ではワクチン2回目接種から1か月後(ピーク値)と6か月後の抗体価は医療スタッフ群に比べて有意に低値であり、透析患者ではワクチン接種後の抗体価上昇が抑制されることを明らかにしたと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科循環器・腎臓・高血圧内科学の金井大輔医師(大学院生)、田村功一主任教授、涌井広道准教授、横浜市立大学附属病院次世代臨床研究センター(Y-NEXT)の土師達也助教、感染制御部の加藤英明部長、医療法人社団厚済会の大西俊正博士、山口聡博士、三橋洋医師、花岡正哲医師、花岡加那子氏らの研究グループによるもの。研究成果は、「Clinical and Experimental Nephrology」にオンライン掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

新型コロナウイルスメッセンジャーRNA(mRNA)ワクチンは、新型コロナウイルス感染症()の重症化率を低下させ、死亡率を減少させる効果がある。新型コロナウイルスmRNAワクチンは2回接種で十分な抗体獲得が可能とされているが、2回目接種後には徐々に抗体価が低下し、COVID-19に対する効果も減少することがわかっている。

進行した慢性腎臓病を持っている者、特に血液透析を受けている者では、COVID-19の重症化や死亡の危険性が高いことが報告されている。しかし、血液透析を受けている者でも、新型コロナウイルスmRNAワクチンを接種することで、重症化率や死亡率の低下が可能になる。そのため、日本国内では、血液透析を受けている者に対してワクチン接種が強く推奨されてきた。

ワクチン接種後抗体価の経時的な推移、血液透析患者群と医療スタッフ群で比較

しかし、進行した慢性腎臓病を持った者は免疫力が低下しており、ワクチンに対する反応が弱く抗体を獲得しにくいとされている。例えば、B型肝炎ワクチンや季節性インフルエンザワクチンの接種に対して抗体を得にくいことが報告されている。新型コロナウイルスmRNAワクチンにおいても、血液透析患者では、ワクチン接種1か月後の抗体価(ピーク値)は、健常者と比較して低いと報告されている。しかし、血液透析を受けている者の、ワクチン接種後長期間経過した後の抗体価については不明点が多く、イスラエル、米国、ドイツから6か月経過後のデータが発表されているものの、日本を含めて東アジアからの報告はなかった。

そこで研究グループは、日本人の血液透析患者群と健康な医療スタッフ群を対象に、新型コロナウイルスmRNAワクチン2回目接種後から6か月間における、中和抗体価の経時的な推移を比較した。また、血液透析患者群の中で、ワクチン接種後の抗体価に関連する因子を検討した。

血液透析患者群、抗スパイクタンパク質抗体ピーク値が医療スタッフ群の3分の1程度

今回の研究では、新型コロナウイルスに対するファイザー社製mRNAワクチンの接種を受けた日本人血液透析患者群と医療スタッフ群を対象として、ワクチン接種後に獲得された抗スパイクタンパク質抗体の力価の経時的な推移を後方視的に調査した。医療法人社団厚済会では、関連透析施設(上大岡仁正クリニック、文庫じんクリニック、金沢クリニック、追浜仁正クリニック)に通院する血液透析患者と勤務している医療スタッフの中で、2回のワクチン接種を完了した抗スパイクタンパク質抗体検査の希望者に対して、抗体検査が提供されていた。また、2回目のワクチンを接種してから1か月後、3か月後、6か月後に検査を受ける機会を設けており、その結果は各被検者に通知され、診療録等に記録されていた。

保管されていた血液透析患者群412名、医療スタッフ群156名のデータを解析した結果、抗スパイクタンパク質抗体の力価は両群で1か月後が最大値(ピーク値)となり、以後は経時的に減衰していた。血液透析患者群では医療スタッフ群に比べて、抗体のピーク値が3分の1程度であり(2617 v.s. 7285 AU/ml, p<0.001)、6か月後においても有意に低値だった(353 v.s. 812 AU/ml, p<0.001)。

一方、抗体価の減衰速度については、両群で有意差を認めなかった(抗体価を対数変換し減衰直線の傾きを減衰速度定数として計算。– 4.7±1.1 v.s. – 4.7±1.4 log AU/mL/年)。

血清アルブミン・ヘモグロビン値高、ビタミンD補充などの患者は抗体価ピーク値「高」

さらに、血液透析患者群の中で、抗体価への影響因子について検討。その結果、血清アルブミン値やヘモグロビン値が高い者、ビタミンDの補充を受けている者、年齢が若い者は抗体価のピーク値が高くなった。また、抗体価のピーク値が高いほど6か月後の抗体価が高く維持されていた。

日本人の血液透析患者、ピーク値を上昇させることが長期的な抗体価の維持に重要

今回の研究の意義は、日本人の血液透析患者では、新型コロナワクチン接種に対する抗体価の獲得反応は健常者に比べて弱いものの、抗体価の減衰速度は同等であり、ピーク値を上昇させることが長期的な抗体価の維持に重要だと明らかにしたことだとしている。さらに、血液透析患者において、ワクチン接種時に、栄養状態や貧血の改善、ビタミンDの補充が抗体獲得反応の向上に寄与する可能性を明らかにした。

COVID-19の蔓延は未だに終息を見通せない状況であり、血液透析を受けている者は、健常者と比較して重症化率や死亡率が高く、ワクチン接種による中和抗体の獲得は重要だ。現在も3回目のブースター接種が実施されているが、海外の報告によると、一般集団に対してブースター接種を行ったところ、前後比較で25倍に抗体力価が上昇したと報告されている。中和抗体価を再獲得するためにブースター接種は有用と考えられるが、日本人の血液透析患者の3回目ブースター接種後の抗体価の変化についてはまだわかっていない。

さらに、重症化予防に重要とされる細胞性免疫は、液性免疫(中和抗体価)とは無関係に獲得されるという報告もある。今後の研究によって、血液透析患者における新型コロナワクチン接種による免疫獲得について、より長期的な効果やメカニズムの解明が期待される、と研究グループは述べている。(QLifePro編集部)

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