■薬機法改正の議論へ
厚生労働省は、23日に開催された「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」で、今後の薬局薬剤師業務や薬局機能のあり方などを盛り込んだ「薬剤師が地域で活躍するためのアクションプラン(仮)」の取りまとめ案を示し、概ね了承された。政府の規制改革実施計画で今年度中に結論を得るとされた「調剤業務の一部外部委託」については、一包化業務に限定して実施する方向性を示し、委託先の範囲は3次医療圏内(都道府県)で決着した。医薬品医療機器等法では調剤の外部委託は認められていないため、厚生科学審議会医薬品医療機器制度部会で法改正に向けた議論が進められる見通し。早ければ2024年の法改正で実現する可能性もある。
取りまとめ案では、規制改革推進会議の医療・介護ワーキンググループで実施が強く求められた調剤の一部外部委託について、委託先を薬局とし、同一法人内に限定しないとした。業務の委託範囲は一包化に限定して行い、急性期患者や委託元の薬局で最終監査を行うことが難しい散剤の一包化は対象外としている。
委託可能な業務として論点に挙がっていた高齢者施設入居者への調剤は、作業部会で「一包化だけでなく粉砕なども含まれ、遠隔での監査が不可能」などの意見が出ていたことから、対象から外した。法令上、調剤の一部外部委託が可能になった後、改めて検討する。
各地域で調剤業務の一部外部委託が利用できるようにする観点から、当面の間は委託先の範囲を同一の3次医療圏内にするよう求めた。委託先の集約化・大規模化が進むと、大規模災害による地域での医薬品安定供給リスクや、小規模な薬局が競争上不利になり、淘汰されるリスクが考えられるため、3次医療圏内の範囲に限定することを決めた。
この日の作業部会では、佐々木淳構成員(医療法人社団悠翔会理事長)から「入口を一包化業務に絞ると、外部委託が広がらずに事業が動かなくなる。一包化以外の業務にも対象を広げた方がいいのではないか」との意見が出たものの、大多数の構成員は「安全性が前提」「一包化業務で外部委託を実施し、安全性が担保できることを確認した上で範囲を広げるべき」と主張。限定的な範囲で調剤の外部委託をスタートさせる方向性で決着した。
最終監査後の薬剤交付については、委託元から交付(直接の手渡しまたは配送)する場合と、委託先から交付(配送)される場合が考えられるが、どちらの交付方法によるかは、委託元の薬局が患者の医療安全が確保される措置を講じた上で適切に判断するとした。
一方、無菌調剤や災害対応、医薬品の融通など地域における薬局間連携の推進に向けて厚労省が提案していた“ハブ薬局”構想については、その名称を使わず、「“地域のまとめ役となる薬局”の存在が必要」に修正した。地域のまとめ役となる薬局のイメージとして「地域連携薬局の機能強化版で対応を検討していく」としている。
医薬・生活衛生局総務課の太田美紀薬事企画官は、作業部会後に記者団に対し、「調剤の一部外部委託で一定程度の合意が得られたのは大きい」と成果を強調。「やることがダメだとの声もあったが、合意が得られたのでようやく検討に着手することができる」と語った。
今後については、「法改正が必要になるかはまだ決定事項ではないが、大きな変革になるためおそらく必要になる」との考えを示し、「同一薬局で一連の調剤行為を行っていたものが、委託で他の薬局となると、法的責任をどう法律に位置づけるか検討していかなくてはならない」と述べた。