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胎児期カドミウムばく露、6か月~1歳半時点までの発達遅れに関連-鳥取大ほか

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2022年06月27日 AM10:33

母親の血液中カドミウム濃度と3歳時点までの子どもの発達との関連は?

国立環境研究所は6月24日、エコチル調査の約10万人のデータを用いた胎児期のカドミウムばく露と3歳までの子どもの発達の関連について解析した結果を発表した。この研究は、鳥取大学医学部の増本年男助教らの研究グループが、国立環境研究所の研究グループとの共同研究として行ったもの。研究成果は、「International Journal of Hygiene and Environmental Health」に掲載されている。

子どもの健康と環境に関する全国調査(以下、)は、胎児期から小児期にかけての化学物質ばく露が子どもの健康に与える影響を明らかにするために、平成22(2010)年度から全国で約10万組の親子を対象として環境省が開始した、大規模かつ長期にわたる出生コホート調査。臍帯血、血液、尿、母乳、乳歯等の生体試料を採取し保存・分析するとともに、追跡調査を行い、子どもの健康と化学物質等の環境要因との関係を明らかにしている。エコチル調査は、国立環境研究所に研究の中心機関としてコアセンターを、国立成育医療研究センターに医学的支援のためのメディカルサポートセンターを、また、日本の各地域で調査を行うために公募で選定された15の大学等に地域の調査の拠点となるユニットセンターを設置し、環境省と共に各関係機関が協働して実施している。

カドミウムは自然界にありふれている重金属元素。日本人にとっては、イタイイタイ病の原因となった重金属元素として有名だ。現在の日本人の血中カドミウム濃度はイタイイタイ病を起こす濃度よりはるかに低いが、血中カドミウム濃度が低い場合でもヒトの健康に影響を与える可能性がある。近年、動物実験にてカドミウムばく露が神経の発達に影響を与えることが報告されている。しかし、ヒトにおいて、カドミウムばく露が神経発達にどのような影響を与えるのかはよくわかっていない。そこで、同研究では、エコチル調査のデータを用いて、胎児期のカドミウムばく露と3歳までの発達との関連について、疫学的手法を用いて調べた。

9万6,165組の母子を対象に、カドミウム濃度別に4グループに分けて解析

今回の研究の解析対象は、全国約10万組の参加者のうち、死産と妊婦の血中カドミウムの分析ができなかった母子を除いて9万6,165組の母子とした。子どもの神経発達の評価には、養育者が記入したAges and Stages Questionnaire 3rd edition(ASQ-3)を用い、出生後半年ごとに評価した。ASQ-3は発達の指標として、コミュニケーション、粗大運動、微細運動、問題解決、個人-社会の5つの領域でそれぞれの値を算出する。胎児期のカドミウムばく露の指標として、母体血(妊娠中期または妊娠末期)中のカドミウム濃度を測定した。カドミウム濃度別に4つのグループに分け、以降の解析に用いた。

妊娠中の喫煙状況、妊娠中の水銀や鉛といった他の重金属ばく露等を考慮して、胎児期のカドミウムばく露と子どもの発達について、母親の出産時の年齢や社会経済状況、既往歴などの影響を制御した解析方法を用いて検討。さらに、先に示したASQ-3の5つの領域について、各年齢時点で、遅延している領域の数とカドミウム濃度との関連性も検討した。

6か月~1歳半時点で子どもの発達の遅れと「関連あり」、2~3歳で関連消失

研究の結果、全体の解析では、胎児期のカドミウムばく露の指標とした母体血中のカドミウム濃度と6か月時点、1歳時点、1歳半時点での発達遅延とに関連が見られた。さらに、カドミウムばく露が、どの遅延している領域と関連しているのかを調べた結果、微細運動および問題解決との関連が見られ、単一ではなく複数の領域での遅延と関連があることがわかった。

そして、これらの関連は2〜3歳では見られなかったことから、カドミウムばく露による発達への影響は消失したと考えられるという。

引き続き、子どもの発育や健康に影響を与える化学物質等の環境要因について調査

同研究の結果、胎児期のカドミウムばく露によって1歳半までの子どもの発達には影響があり、2歳〜3歳については影響が見られない結果が見られた。一方で、同研究での問題点として、「子どもが出生後に受けたカドミウムばく露は考慮に入れておらず、その影響は制御できていないこと」「胎児期のトータルとしてのばく露量ではなく、その期間中のある一時点で測定した母体血中濃度を指標としているので、胎児の受けた実際のカドミウムばく露量との関連性を評価したことにはならないこと」「ASQ-3は母親の目から見た発達の評価であるので、評価基準にばらつきがある可能性があること」「ASQ-3の評価結果が得られなかった参加者の情報が反映されていないこと」を、挙げている。

エコチル調査では、カドミウム以外にもさまざまな化学物質を測定している。引き続き、子どもの発育や健康に影響を与える化学物質等の環境要因について調査する、と研究グループは述べている。

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