核内受容体PPARαの活性に着目、皮膚機能やバリア機能向上に
マルホは6月23日、ケラチノサイトの分化誘導、脂質産生の促進、バリア機能の向上、表皮角化細胞において、皮膚炎症の抑制などに関わる核内受容体PPARαを「ヒメガマホエキス」が活性化し、皮膚バリア機能や保湿に関連する遺伝子発現を増加させることを明らかにしたと発表した。この研究は、同社と大阪大学大学院薬学研究科の橘 敬祐講師らの共同研究グループによるもの。研究成果の一部は「International Journal of Cosmetic Science」に掲載されている。
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ヒトの表皮は、基底膜に接するケラチノサイトが分裂、分化、成熟することによって形成される。表皮には水分の蒸散を防ぐバリア機能が備わっており、細胞間脂質がこのバリア機能に重要な役割を果たしている。バリア機能が正常に保たれていると、皮膚は水分を保つことができるが、バリア機能が損なわれると乾燥などの荒れ肌の状態となる。PPARα(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体α)は、表皮に発現し、ケラチノサイト分化の誘導、脂質産生の促進、バリア機能の維持、皮膚の炎症の抑制に関与する。研究グループは、PPARα活性の調整ができる物質を見出すことにより、皮膚機能を制御し、バリア機能向上が期待できると考えた。
スクリーニングで得られた36種類のエキスの中から「ヒメガマホエキス」を見出す
今回の研究では、独自に構築したPPARα活性化因子スクリーニング細胞株を用いてスクリーニングし、約500種類の天然エキスについてPPARα活性を評価した。PPARαを活性化する36種類のエキスを同定し、その中でヒメガマホエキスはPPARαへ特異的に作用し、濃度依存的なPPARαの転写活性を示し、PPARαリガンド活性成分を含むことが確認できた。ヒメガマホエキスは、これまで漢方の生薬として知られていたが、PPARαリガンド活性成分を含むことを実証したのは初めてだという。
また、ヒメガマホエキスは、正常ヒト表皮角化細胞において、PPARα標的遺伝子ペリリピン2(PLIN2)や、皮膚バリアや保湿に関連する遺伝子アクアポリン3(AQP3)、ヒアルロン酸合成酵素3、硫酸基転移酵素2B1b(SULT2B1b)の発現を増加させた。PPARαの活性化は、AQP3発現、コレステロール硫酸合成酵素SULT2B1b発現、ヒアルロン酸産生の促進を介して表皮バリア脂質の一種であるコレステロールの合成促進および表皮角化細胞の分化を誘導するとともに、脂肪滴構成因子PLIN2の発現を介してバリア機能の改善に寄与することが期待される。
ヒメガマホエキスと甜茶エキスの組み合わせも高いPPARα活性を示す
さらに、ヒメガマホエキスと、スクリーニングで活性のあった他のエキスとの組み合わせでのPPARα活性を確認し、ヒメガマホエキス単体よりヒメガマホエキスと甜茶エキスの組み合わせは高いPPARα活性を示し、ヒメガマホエキスと活性のあったその他植物エキスとの組み合わせによってバリア機能改善が期待できることも明らかになった。「今後、本研究成果を応用し、角層のバリア機能を高めるスキンケア製品などの開発を検討する」と、研究グループは述べている。
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