日本製薬工業協会の手代木功副会長は9日の自民党「創薬力の強化に関するプロジェクトチーム」(PT)で、薬剤耐性(AMR)に対する抗菌薬の開発加速に向け、製造販売承認以降の売上を保証するプル型インセンティブ制度を2024年度から運用開始するよう政府に求めた。国内の抗菌薬の研究開発推進策の歩みが遅い現状を踏まえたもの。
この日のPTでは、製薬協から「AMR対策としての研究開発促進策」についてヒアリングを行い、AMRが国内に与える影響とAMR対策の現状について手代木氏が説明した。
製薬企業ができるAMR対策として、適正使用と研究開発・創薬を挙げた一方、適正使用の推進と比べ、プル型インセンティブを筆頭とした研究開発の推進策の歩みが遅いことを課題として指摘した。
新規抗菌薬の上市数が経年的に低下し、上市時期も欧米より遅れているドラッグラグや、国内における抗菌薬開発のパイプライン数や市場規模が欧米諸国に比べ少ないドラッグロスの現状も説明し、これらの原因として抗菌薬開発の経済的リスクに見合った利益が期待しづらいことを挙げた。
手代木氏は、課題の解消策としてプル型インセンティブの重要性を強調し、上市後に安定的に薬剤を供給するための市場環境の整備が必要とした。
これらを踏まえ、政府に対して「今年度の骨太方針に明記されたインセンティブ付与の検討を加速させ、24年度からの制度運用開始を目指すことを国際公約とし、23年のG7サミットにおけるAMR対策の議論において主導的役割を果たしてもらいたい」と要求した。
出席した議員からは「抗菌薬開発の利益保証のためには、プル型インセンティブだけではなく、薬価制度の例外を設ける方法もある。政府としてやりやすい方で取り組んでいくべき」との声も上がった。