経皮的腎砕石術、医師の修練に要する時間などの問題
名古屋市立大学は6月13日、人工知能を搭載したロボット機器を用いた世界初の臨床試験を行い、ロボット支援透視ガイドによって腎穿刺の正確性が向上し、医師の修練時間の短縮と、治療成績の改善につながる可能性を見出したと発表した。この研究は、同大大学院医学研究科の濵本周造・田口和己講師(腎・泌尿器科学分野)らと、シンガポールの医療機器ベンチャー企業NDR Medical Technologyとの共同研究グループによるもの。研究成果は、「The Journal of Urology」に掲載されている。
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大きな腎結石に対する治療である経皮的腎砕石術は、体表から腎臓内部に瘻孔を作り、そこから内視鏡を挿入して結石を砕いて取り出してくる手術だ。別の治療方法である体外衝撃波砕石術や経尿道的腎砕石術と比較し、高い確率で一度に結石を除去できる反面、腎臓に瘻孔を作る腎穿刺は難しく、出血や他の臓器損傷が起こりうる。そのため、十分な修練を積んだ医師によって施行されているのが現状だ。このため、医師の修練に要する時間、施行できる病院が限られているなどの問題がある。
ロボット支援透視ガイドでの腎穿刺、従来の超音波ガイドと治療成績を比較
研究グループはこれまでに、人工知能を搭載したロボット機器により、リアルタイムのX線透視画像をリアルタイムで観察しながら腎穿刺を自動化する試みを行ってきた。今回の研究では、このロボット支援透視ガイドでの腎穿刺の有効性を、特定臨床研究として初めて実臨床において無作為割付試験で報告した。
2020年1月~2021年5月にかけて、腎結石にて経皮的腎砕石術を要した患者71人を対象とした。無作為割付により、ロボット支援透視ガイド群36人、従来法である超音波ガイド群35人に分け、治療成績を比較した。
単回穿刺成功率は両群で同等、腎穿刺の平均回数・時間はロボット群で「少」
試験の結果、主要評価項目である単回穿刺成功率は両群で同等だった。超音波ガイド群では14.3%で腎穿刺を途中で上級医に交代する必要があったが、ロボット支援透視ガイド群では交代は必要なかった。
また、腎穿刺の平均回数(ロボット支援透視ガイド群:超音波ガイド群=1.83回:2.51回)、腎穿刺にかかった平均時間(ロボット支援透視ガイド群:超音波ガイド群=5.5分:8.0分)と、ロボット支援透視ガイド群で有意に少ない結果だった。その他、結石除去率や合併症の発生率は両群で差はなかった。
多変量解析により手術の治療成績に関連する複数の因子を配慮して分析すると、ロボット支援透視ガイドによる腎穿刺の回数を1回弱減らすことができると予測されたという。
従来法と同等以上の治療成績、熟練度に関わらず施行できる可能性
今回検証を行った経皮的腎砕石術における腎穿刺は、術者の習熟度により治療成績が左右される。熟練医の育成のため、ガイドの方法や修練方法の工夫が考えられてきたが、多くの尿路結石患者を迅速に治療するためには限界があった。今回用いた方法では、人工知能による腎穿刺の至適角度の調整と、ロボットアームによる確実な穿刺補助を行ってくれる。術者は角度や距離感、手ブレなどを心配することなく的確な穿刺を行うことができる。
今回の研究により、このロボット支援透視ガイドが従来法と同等以上の治療成績を得ることができ、また熟練度に関わらず施行できる可能性が高いことが証明された。この結果は、より確実な治療を行えるだけでなく、施行できる医師が増えることで、さらに多くの病院でこの手術が受けられるようになる可能性を示している。このような技術発展により、尿路結石の医療逼迫の改善が期待される、と研究グループは述べている。
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