「長期開存性」「抜去可能」を両立する新規ステントの開発
東京都立産業技術研究センター(都産技研)は6月8日、進行した胆管がんや、膵臓がんの緩和療法として使われる、胆管内に埋め込む、胆管ドレナージ用自己拡張型ステントを、世界に先駆けて開発したと発表した。この研究は、同センター、東京医科大学、福井大学、慶應義塾大学医学部腫瘍センター・低侵襲療法研究開発部門と共同で実施したもの。研究成果は、「Journal of Materials Chemistry B」に掲載されている。
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膵臓がんなどによって胆管が閉塞してしまうと、胆汁が排出されなくなることにより、黄疸を発症する。黄疸には発熱や悪心などを併発するため、ステントを胆管に内視鏡的に留置して胆汁を排出する緩和療法が行われる。
従来は、プラスチックステントおよび金属ステントが主に用いられてきた。プラスチックステントは抜去可能であるものの早期に詰まってしまう。金属ステントは内腔が広く長期開存性を示すが、網目からのがんの浸潤により抜去できない、という課題を抱えていた。これらのステントの長所を両立した「長期開存性を示し抜去可能」な新たなステントの開発が待望されていた。
PVA素材を採用した新規ステント、豚胆管の拡張可能
今回開発されたステントは、胆管ドレナージ用自己拡張型ステント。都産技研は素材として、ポリビニルアルコール(PVA)ハイドロゲルに着目した。PVAは生体に安全な素材であり、頑丈なハイドロゲルを作製可能だ。PVAハイドロゲルを用いて作製した胆管ステントを試したところ、豚胆管の拡張が可能であることが明らかになった。
乾燥状態で内視鏡的に胆管に送達され、胆管留置後は胆汁などの体液による膨潤により自己拡張し、内腔が拡大する。膨潤後の内径(約5mm)は市販品のプラスチックステントの内径(最大3.3mm)を超えており、長期開存性が期待され、胆汁の流れを確保でき、黄疸の解消に役立つ。
患者、医療従事者の大幅な負担軽減に期待
今回作成されたステントは、現行ステントの長所を両立した新たなステントとしての可能性が期待される。また、ステント留置が必要な患者、医療従事者の大幅な負担軽減も期待される。研究グループは「既存ステントとの優位性の比較、さらなる材料の改良を進めている」、と述べている。
なお、都産技研は同開発に関わる中小企業との共同研究を広く募集している。
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