22年の骨太方針では、「持続可能な社会保障制度の構築」の項目を設け、医薬品の品質・安定供給の確保と共に創薬力を強化し、様々な手段で科学技術力の向上とイノベーションを実現するとした。特に癌・難病分野の創薬推進に向け、臨床情報と全ゲノム解析の結果に関する情報を連携させ搭載する情報基盤を構築し、利活用に関する環境を整備する。
OTC医薬品・OTC検査薬の拡大に向けた検討によるセルフメディケーションの推進、22年度診療報酬改定で導入されたリフィル処方箋について、普及・定着に向けた仕組みの整備も実現させるとした。また、バイオシミラーに関しては、医療費適正化効果を踏まえた目標値を年度内に設定して着実に推進する。
オンライン資格確認については、23年4月から保険医療機関と薬局に原則として導入を義務づけると共に、患者によるマイナンバーカードの保険証利用が進むよう関連する支援措置を見直す。
科学技術・イノベーションへの投資として、量子、人工知能(AI)、再生・細胞医療・遺伝子治療等のバイオテクノロジー・医療分野について、国家戦略を示し、官民連携で科学技術投資を抜本的に拡充することとした。
スタートアップへの投資も重視し、年末に育成5カ年計画を策定。具体的には、研究開発や販路開拓を支援するため、オープンイノベーションの活性化のほか、ベンチャーキャピタル(VC)と連携した支援拡充や創薬ベンチャーへの支援強化などに取り組む。
経済安全保障の強化も強調した。今通常国会で成立した経済安全保障推進法を着実に実施するため、速やかに基本方針を策定し、サプライチェーンと官民技術協力に関する政策は先行して可能な限り早期に実施。医薬品など重要物資の安定供給を早急に確保するため、供給が絶えるリスクを分析し、物資の特性に応じて金融支援や助成など必要な措置を整備するとした。
■創薬を成長産業に‐「新しい資本主義」計画
また政府は、創薬を成長産業にすることを明記した「新しい資本主義のグランドデザインおよび実行計画」を閣議決定した。同計画では、「科学技術・イノベーションへの重点的投資」を盛り込み、具体的には世界の潮流と同様に日本でも創薬を成長産業にすると明記。特に今後の感染症危機を見据え、治療薬とワクチンの開発に取り組むとした。
再生・細胞医療・遺伝子治療については、新たな医療技術の臨床研究・治験推進などに取り組み、有効な技術を実用化につなげる。量子コンピュータや量子暗号通信では、創薬・医療など幅広い分野で実証を進めるほか、産業化に向けた拠点整備も進める。