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【化学療法学会で議論】感染症対策強化を評価-国家安全保障の観点強調

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2022年06月10日 AM11:00


■化学療法学会で議論

日本化学療法学会総会が3~5日まで岐阜市などで開かれ、パネルディスカッションで産官学の関係者が国家の危機管理としての感染症対策のあり方について討議した。関係者は一様に、新型コロナウイルスの感染拡大を契機に日本でも、感染症領域の研究や治療薬・ワクチン開発を支援する仕組みが進展したことを評価。一過性で終わるのでなく、国家安全保障の観点から継続的に取り組みを進めるよう求めた。

手代木功氏(塩野義製薬社長)は、新型コロナの治療薬やワクチンの開発で日本が大幅な遅れをとった要因として、政府の平時の備えや緊急時対応の違いを挙げた。

米国では平時から、緊急事態に対応できる国家体制の整備を進めている。モデルナの研究開発費の大部分は米国の国防総省が拠出した。新型コロナの感染が拡大した緊急時にはワープスピード作戦を実施。ワクチンや治療薬、診断薬の開発加速を目的に、有望な候補に対して大規模な投資を行ったという。

一方、日本でも、大きな予算を持ちワクチン開発を後押しする先進的研究開発戦略センター()が日本医療研究開発機構()内に設置された。医薬品医療機器等法の改正で緊急承認制度も創設された。

手代木氏は、日本でも国家安全保障の観点から様々な取り組みが進みつつあることを評価。「今後も産官学が連携して、国の安全保障のために動かしていかなければならない」と述べ、取り組みを継続することの重要性を訴えた。

日本だけでなく、世界でも急性感染症領域の医薬品開発は厳しい環境にある。感染症は流行しない年もあり、他の疾患領域と比較して市場の予見性が低いため、多くの製薬企業が急性感染症領域から撤退している。米国では、有望なベンチャーが収益を十分に確保できずに倒産したという。

手代木氏は、感染症領域からの撤退を防ぐため、一定のコストを支払い火事に備える消火器を引き合いに、新たな仕組みを提示。国家による医薬品備蓄やサブスクリプションモデルなどで、製薬企業等の感染症領域の収益を維持する“消化器モデル”の構築を提案した。

同学会理事長の松本哲哉氏(国際医療福祉大学医学部感染症学講座教授)は、「感染症研究に携わる人材は多くない」と述べ、「高病原性の病原体を取り扱える設備は少ない。研究費不足に常に直面している」と課題を語った。

ただ、新型コロナの感染拡大を契機に、近年はAMEDによる感染症領域の研究費支援額が大幅に増加。若手研究者らが集まって研究に取り組み、成果を上げるようになってきた。SCARDAによるワクチン開発の強力な支援も見込まれている。

松本氏は「国も今までとは対応が異なる。感染症への向き合い方が違ってきている」と評価。

「国家の危機管理という視点で、一時的な動きにとどまらず、長期的な視点でアカデミアを育てることが大事。それによって次に何かが起こった時に迅速に対応できる」と呼びかけた。

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