医薬品医療機器総合機構(PMDA)は、医薬品を製造する作業室で、薬理作用・毒性が不明な治験薬を製造していた事例が確認されたとして、GMP指摘事例速報(オレンジレター)を公表した。指摘があった製造所は受託製造メーカーであり、医薬品を製造する作業室内の同一設備でGMP省令適用外となる治験薬を製造していた。
GMP省令では、医薬品を取り扱う作業室でGMP省令が「適用されない」物品の製造作業を原則禁止している。ただ、例外として薬理学的・毒性学的評価など科学的データに基づく残留管理のための限度値の設定、交叉汚染を防止する適切な措置が取られている場合に限り、作業室の共用を認めている。
確認された事例では、委託元から製造委託を受けた治験薬がどのような薬理作用・毒性を有する物品であるか情報を入手せずに、科学的データに基づく残留管理のための限度値を設定しないまま、医薬品を製造する作業室でGMP省令適用外の治験薬を製造していた。
作業室や設備を共用する物品の毒性が不明である場合、残留管理のための適切な限度値が設定されず、交叉汚染を防止する適切な措置が取られず、医薬品を服用する患者に健康被害が発生するリスクが懸念される。
PMDAは、医薬品製造所に対し、新たに製品の製造を開始する場合、取り扱う物品の情報を入手することや、洗浄方法や除去方法の確立など適切な交叉汚染防止の対策を実施するよう注意喚起したほか、製造所として作業室を共用している物品の特性を理解し、リスクを取り除く対応を行うよう呼びかけている。