非発作時の安静時にてんかん患者と健常者で位相振幅結合が異なるか?
日本医療研究開発機構は6月7日、脳磁図の位相と振幅の同期度合いは、てんかん患者の診断に役立つことを明らかにしたと発表した。この研究は、大阪大学大学院医学研究科脳神経外科の貴島晴彦教授、特任研究員の藤田祐也、高等共創研究院の栁澤琢史教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Journal of Neural Engineering」にオンライン掲載されている。
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てんかんの診断には、非侵襲的に脳神経活動をとらえる脳波や脳磁図が有用だ。しかし、てんかん患者の罹患率に対して、脳波や脳磁図を判読するてんかん専門医の数は十分ではないため、潜在的なてんかん患者が多数存在することが指摘されている。てんかんの自動診断が可能となれば、診断の均質化に役立つ。
研究グループは、先行研究より、てんかん患者の脳磁図で見られる特徴として、異常な位相振幅結合(Phase-amplitude coupling:PAC)の存在を明らかにし、頭蓋内脳波の位相振幅結合がてんかん患者の発作時と非発作時を識別できることを報告した。しかし、非発作時の安静時にてんかん患者と健常者で位相振幅結合が異なるかは不明だった。
今回の研究では、てんかん患者と健常者の安静時脳磁図を計測し、位相と振幅の同期度合いを調べた。位相振幅結合がてんかん患者と健常者で異なり、これまでにてんかん患者の診断に有用と報告された特徴量(相対パワー(Relative Power)、機能的結合(Functional connectivity))や人工知能による深層学習と組み合わせることで、てんかん患者と健常者の識別率が向上するかを検討した。
安静時、脳磁図の位相と振幅の同期度合いは患者と健常者で異なる
結果として、θ帯域とlow γ帯域、θ帯域とhighγ帯域の位相振幅結合は、てんかん患者が健常者よりも高く、δ帯域とlow γ帯域の位相振幅結合はてんかん患者が健常者よりも低いことが判明。
また、位相振幅結合単独、位相振幅結合をパワーや機能的結合と組み合わせた場合、人工知能と組み合わせた場合のどの場合においても、識別率は向上した。特に、人工知能と組み合わせた場合に最も識別率は高く、てんかん患者と健常者を90%で識別することができた。
てんかん自動診断実用化へ期待
てんかん患者の潜在的な数に対して、てんかん専門医の数は十分ではなく、診断の均質化が十分でない現状がある。今回、安静時脳磁図の位相振幅結合はてんかん患者と健常者と異なることを発見し、てんかん患者の特徴と考えられる。また、この位相振幅結合は、過去に報告されたてんかんの診断に役立つ特徴量と組み合わせることで非常に高い識別率が得られており、てんかん自動診断の実用化につながることが期待される、と研究グループは述べている。
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