化学放射線治療実施98症例の内視鏡画像を深層学習、治療後の局所制御予測モデルを構築
広島大学は6月1日、食道がんに対する術前放射線治療における局所制御に関して80%以上の精度で予測可能なモデルであるDEENDOUTを開発したと発表した。この研究は、同大大学院医系科学研究科の河原大輔助教、村上祐司准教授、永田靖教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「The British Journal of Radiology」に掲載されている。
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局所進行食道がんに対して化学放射線療法および手術、または化学放射線療法単独での治療戦略がある。化学放射線療法および手術の場合、手術前に化学放射線療法が行われる。化学放射線治療後、手術前に約4割の患者は局所の病変の制御(完全寛解)が得られている。化学放射線治療前の内視鏡検査画像から治療効果を予測できれば、手術が不要となり、臓器温存が期待できる。
今回の研究では、同大病院で化学放射線治療を実施した98症例の内視鏡画像を、AI技術であるDeep learningを用いて治療後の局所制御予測モデルを構築した。
予測精度は画像フィルタなしで64%、ウェーブレットフィルタ使用で81%まで改善
治療前内視鏡画像に対して16層のConvolution neural network(CNN)モデルを構築。フィルタなし、3種類の画像フィルタ(ラプラシアンフィルタ、ソーベルフィルタ、ウェーブレットフィルタ)を使用した4種類の入力画像における予後予測精度に関しても比較検討を行った。
予測精度は、画像フィルタなしでは64%の予測精度だったが、ラプラシアンフィルタで69%、ソーベルフィルタで71%、ウェーブレットフィルタを使用することで81%まで予測精度が改善。つまり、同じCNNモデルを構築した上で入力画像を工夫することで、Deep learning学習精度が大幅に向上することを示した。
臨床活用のために精度向上を図り、効率的な診断技術開発へ
内視鏡画像ではこれまで、Deep learning技術を用いて病変の検出が研究開発で行われてきた。今回の研究により、予後予測が可能となれば、治療前のスクリーニング検査で病変検出および治療効果の推定まで可能になるという。今後は、実際の臨床に活用するために精度の向上を図り、個別化診断、治療における効率的な診断技術の開発を進めていく、と研究グループは述べている。
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・広島大学 研究成果