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慢性腰痛、筋活動分布に痛みの性質と疼痛部位が影響-畿央大

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2022年05月31日 AM11:00

慢性腰痛患者対象、疼痛部位・性質と筋活動を評価

畿央大学は5月30日、慢性腰痛症例を対象に、痛みの性質に着目して痛みの強さ・部位と筋活動分布の関連性を調査し、痛み強度が増すにつれて、痛みを感じている部位周囲の筋活動を抑制する運動適応が痛みの性質に依存することを明らかにしたと発表した。この研究は、同大ニューロリハビリテーション研究センターの重藤隼人客員研究員らの研究グループによるもの。研究成果は、「Pain Research and Management」に掲載されている。


画像はリリースより
(詳細は▼関連リンクからご確認ください)

慢性腰痛患者の筋活動の特徴として、立位で体幹を屈曲した時に、屈曲位から体幹を伸展させる時に背筋群の筋活動が増強もしくは減弱することが報告されている。また、痛みによって筋活動分布を変化させることも報告されている。しかし、疼痛強度と部位が筋活動にどのように影響するかは明らかにされていない。そして疼痛の性質による筋活動への影響も検証されておらず、疼痛強度・部位および疼痛の性質と筋活動分布の関連性は明らかにされていなかった。

今回の研究では、慢性腰痛患者を対象に、疼痛部位・性質の評価と筋活動を評価。痛みの性質はSFMPQ-2を用いて評価した。筋活動は表面筋電図を用いて、立位体前屈課題時の脊柱起立筋の筋活動を測定。主動作筋の筋活動として体幹屈曲位から伸展させる時の筋活動と筋活動分布の重心を算出した。また、疼痛部位と筋活動分布の重心との間の距離を算出した。

神経障害性疼痛の強度増で、背筋群の筋活動抑制

まず、一般化線形混合モデル分析という解析方法を用いて、疼痛強度・性質、疼痛部位および筋活動の関係を検証。筋活動に対する疼痛強度・性質の影響を検証した結果、「」「軽く触れるだけで生じる痛み」の疼痛強度が増すと背筋群の筋活動が抑制される関係が認められた。

疼痛強度増で、疼痛部位に近い部位の筋活動抑制の反応が疼痛性質に依存

続いて、疼痛部位と筋活動分布の重心との間の距離に対する疼痛強度・性質の影響を検証した結果、「間欠痛」「ずきんずきんする痛み」「割れるような痛み」「拷問のように苦しい」「軽く触れるだけで生じる痛み」の疼痛強度が増すと、距離が増大する関係が認められた。筋活動分布の重心は筋活動が高い部位を示していることから、疼痛強度が増大すると疼痛部位に近い部位の筋活動が抑制される反応が、疼痛性質に依存していることを示しているという。

特定の疼痛性質の強度が増大すると、主動作筋の筋活動が抑制された。疼痛部位と筋活動分布の関係性に着目すると、特定の疼痛性質の強度が増大することによって疼痛部位近くの主動作筋の筋活動が抑制されたとしている。

研究グループはこの結果について、疼痛による主動作筋の筋活動の抑制を示す疼痛適応モデル(pain adaptation model)のメカニズムが反映された結果であり、疼痛性質に依存した筋活動の変化は、腰痛関連組織に由来した疼痛性質が筋活動に影響した結果であると考察している。

今後、慢性腰痛患者の運動制御メカニズムを研究

今回の研究成果は、疼痛の性質によって疼痛強度・部位による筋活動分布の変化が異なることが示され、痛みの性質に着目して痛みと運動制御の関連性を捉える重要性が示された。今後は慢性腰痛患者の運動制御のメカニズムについて研究する予定だ、と研究グループは述べている。

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