日本人の食事摂取状況を反映した網羅的な食品画像データベースは存在しなかった
東京大学は5月30日、日本人成人644人の詳細な食事記録データをもとに、日本人が日常的によく食べる食品の種類と量を示した画像データベースを構築したと発表した。この研究は、同大大学院医学系研究科社会予防疫学分野の篠崎奈々客員研究員、村上健太郎助教、佐々木敏教授らの研究グループによるもの。研究成果は、「Nutrients」オンライン版に掲載されている。
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食事調査において、食品の摂取量を推定することは不可欠だ。食品の摂取量を知るための確実な方法は食品を計量することだが、飲食する全ての食品の重量を量るのは被調査者の負担が大きいため、大規模な食事調査で実施することは困難だ。そこで諸外国では、食品の摂取量の推定に食品の画像が広く使われている。例えば、食品を少なく盛り付けたものから多く盛り付けたものまで複数の写真を示し、その中から実際に食べた食品の量に最も近い写真を選択することで、食品の量を推定することができる。画像データを用いた摂取量推定は、被調査者の負担が小さく、調査者にとっても使いやすいというメリットがある。
食品画像のデータベースは、食品の入手可能性や食事調査のデータに基づいて、国や地域ごとに開発する必要がある。しかし日本では、日本人の食事摂取状況を反映した網羅的な食品画像データベースは存在しない。そこで研究グループは今回、詳細な食事調査のデータに基づいて、日本人の食品摂取量の推定に役立つ画像データベースを構築した。
日本人成人男女644人の5,512日分の食事記録データを解析、よく食べる食品を特定して撮影
食品画像データベースに収載する食品を決定するため、日本人成人男女644人による計5,512日分の食事記録データを解析し、登場回数や総摂取重量などから、日本人がよく食べる食品を特定した。各食品は、「連続写真」または「ガイド写真」として撮影することとした。連続写真は、カレーライスやパスタなど、形や量が決まっていない食品や、料理の分量が徐々に増えていく様子を連続的な写真で表現したもの。一方、ガイド写真は、バナナやクッキー、ドーナツなど、形や量がある程度定まっている食品と料理の分量や種類のバリエーションを、1枚の写真で表したもの。
さらに、飲料や調味料の分量を推定するための写真として、コップ、グラス、計量スプーンなども撮影した。各食品の重量は、スーパーマーケットで売られているさまざまな商品の調査や、食事記録データから算出した各食品の摂取重量に基づいて決定。写真撮影は、プロの料理写真家による技術指導を受けた後に行った。食品や料理の量や皿の大きさを認識しやすくするため、箸・ナイフ・フォーク・スプーンなどから各食品や料理に合うものを1〜2個選んで、一緒に写真に収めた。
209品目の食品と料理の写真をデータベースに収載、近年人気が高まっている食品も
結果として、209品目の食品と料理の写真をデータベースに含めることとなった。このうち105品目は連続写真であり、104品目はガイド写真だった。連続写真では基本的に、それぞれの食品や料理の分量を、少ないものから多いものまで7段階で示した。ガイド写真では、1枚の写真の中に2〜19(平均5.3個)の食品を示した。
また、プロテインバーやエナジーバーなど、食事記録における登場頻度は低いものの、近年人気が高まっている食品も撮影した。また、コップやスプーンなど12種類の食器の写真も収載された。マグカップやグラスには、液量の選択肢として7本の線を追加した。
食事調査と組み合わせた食品摂取量推定への貢献に期待
同データベースは、日本人成人の食事摂取データに基づいて構築された、日本で初めての網羅的な食品画像データベースとなる。特定の写真を選択したり、写真に示されている分量と比べた相対的な大きさを報告したりすることで、食品の重量を推定できるため、食品摂取量の推定を、より簡便にするのに役立つと考えられる。
また、各写真と栄養素含有量のデータを紐づけることで、エネルギーや栄養素の摂取量を計算することも可能になる。さらに、食品画像はデジタルデータであるため、タブレット端末やノートパソコンなど様々なデバイスで表示したり、印刷したりすることができる。したがって、ウェブやスマホアプリなどの使用した新たな食事調査法の開発や、従来の質問紙調査の改良などに寄与することが期待される、と研究グループは述べている。