筋萎縮性側索硬化症など、別の神経変性疾患病態に関与が知られるTDP-43
大阪大学は5月25日、トランス活性化応答因子DNA結合タンパク質-43(TDP-43)の異常蓄積単独により引き起こされたパーキンソン病(PD)の症例を報告したと発表した。この研究は、同大大大学院医学系研究科の別宮豪一特任講師(常勤)、山下里佳大学院生、神経内科学の望月秀樹教授ら、大阪刀根山医療センター脳神経内科の井上貴美子医師の研究グループによるもの。研究成果は、「Movement Disorders」オンライン版に掲載されている。
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PDは、主に中年期以降に発症し、手足の振戦や動作緩慢といった運動症状を呈する神経変性疾患。これまでに、PDでは、神経細胞内にタンパク質αシヌクレインの異常凝集が形成されることが病態に深く関与することが知られている。
一方でTDP-43は、筋萎縮性側索硬化症や前頭側頭型認知症といった別の神経変性疾患の病態に関与していることが知られている。
PD病態に関与のαシヌクレイン蓄積は全く見られず
今回、研究グループは、大阪刀根山医療センターで典型的パーキンソン病として治療していた患者の剖検と病理診断を実施した。今回の症例は、特徴的な運動症状を呈し、各種検査所見や臨床経過等から臨床的にPDと確定診断されていた。しかし、死後の神経病理検索では中枢神経内にαシヌクレインの異常蓄積は全く見られず、また、同じくPDに類似する症状を惹起することが知られているタウタンパク質の異常蓄積も見られなかった。
中脳黒質など中枢神経の広い範囲でTDP-43の異常蓄積
さらに、家族性PDのほか、TDP-43に関連した神経変性疾患であるペリー症候群、筋萎縮性側索硬化症、前頭側頭型認知症に関連した遺伝子の変異を網羅的に検索。しかし、特に異常は発見されなかった。
代わりに、中脳黒質をはじめとした中枢神経の広い範囲にTDP-43の神経細胞内ならびにグリア細胞内の異常蓄積が見られたという。これらのことから、TDP-43に関連した全く新しいタイプのPDであることが示されたとしている。
αシヌクレインだけでなく、TDP-43関与も念頭に置く必要
今回の研究成果により、TDP-43単独で黒質のドパミン神経細胞死が惹起されることが示された。今後は、パーキンソン病の病態を考えるうえでαシヌクレインのみならず、TDP-43の関与を念頭に置く必要があるという。
今後、TDP-43のPDへの関与も含めた病態解明や新たな治療法開発が期待される、と研究グループは述べている。
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・大阪大学 ResOU