皮膚科医100人、乾癬患者116人を対象に調査
日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社は5月26日、乾癬の確定診断を受けたことのある患者および乾癬患者を専門に診察している皮膚科医を対象に、診察時のコミュニケーションの実態や評価などについて調査を実施し、その結果を発表した。同調査は、同社と一般社団法人INSPIRE JAPAN WPD 乾癬啓発普及協会が共同で実施したものだ。
画像はリリースより
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乾癬の代表的な症状は免疫システムの過剰活性による皮膚の炎症症状(皮疹)で、症状の現れかたによっていくつかの種類にわけられる。個々によって症状に違いがあり、関節の痛みや発熱・倦怠感といった全身症状がみられることもある。乾癬の原因は今のところ明確になっていない。
今回の調査は、インターネットを用いて、2022年4月14日~4月19日に実施された。対象の患者は、18歳~99歳で、5種類の乾癬のうちいずれかの確定診断を受けた116人。対象の皮膚科医は、24歳以上で直近1か月以内に5人以上の乾癬患者を診察した100人だった。
「患者が多様な悩みを抱えていること」に対する医師の理解は高い
患者対象に「自身の疾患に関わる悩みの有無」を尋ねた設問において、「皮膚や症状に関する悩みや疑問、困りごと(調査項目1~10)」は約5割、「個人的な悩みや実生活に関する疑問や困りごと(調査項目11~24)」は約4割が「悩んでいる」と回答していた。また、医師は「患者が悩みを抱えていると思う」という回答が調査項目全24項目において約8割で、患者が多様な悩みを抱えていることに理解を示していることがわかった。
医師に「相談を受ける意向」があっても、患者が「実際相談する」ことは少ない
相談意向を問う設問においては、医師の約9割が、調査項目全24項目において患者に「相談してほしい」と回答し、患者の約4割は「相談したいと思う」と回答していた。
実際に患者が医師に自ら悩みを相談する割合は「皮膚や症状に関する悩みや疑問、困りごと」が約5割、「個人的な悩みや実生活に関する悩みや疑問、困りごと」が約3割という結果だった。患者が相談をためらう主な理由として「医師に尋ねても期待した答えが返ってこないから」、「診察時間が限られているから」、「医師に聞くことだとは思わなかった」などが挙げられた。
一方、医師が患者に自ら悩みについて尋ねる割合は約3割だった。医師が自ら尋ねない理由は、「診察時間が限られているから」、「患者さんが求めていなそうだから」、「プライバシーに関わるから」などが挙げられた。
医師に相談して「良かった」約4割、「後悔した」約2割
医師に相談して良かった経験・後悔した経験の有無を問う設問においては、約4割の患者が、医師に「相談して良かった・言われて嬉しかったことがある」と回答した。その内容について具体的に聞いたところ、治療や疾患に関する理解の進展があったことや、医師からの前向きな言葉や対応が嬉しかったという意見が多く見られた。その一方、約2割は「医師に思い切って相談して後悔した、言われて辛かったことがある」と回答していた。
コミュニケーション不十分な可能性を示唆、医師側から相談できる環境作りを
同調査を監修した聖母病院皮膚科部長の小林里実医師は次のように述べている。「今回の調査によって、患者の悩みは多様であり、医師は何でも相談してほしいと思っていることが明らかになった一方で、悩みの種類によっては実際に患者が相談するケースが少ないことも示された。その理由は、患者側は医師に相談すべき内容ではないと思っていることや、疾患による気持ちの落ち込みや自己肯定感の喪失から積極的に医師に質問できない状況にあるとみられる。医師側はQOL改善のための対話による治療が十分に浸透しておらず、積極的に介入することへの難しさがあると推察され、十分なコミュニケーションができていない可能性が考えられる。患者の治療満足度やQOL向上のためには、医師側からまず乾癬により生じた困難や悩みに共感を示すことで、患者が安心して相談できる環境を作り出すことが大切。このような言葉を聞いた患者は、思い切って医師に相談してみては。時代の移り変わりとともに医師・患者の関係も変わってきている。疾患に関わる生活上の課題を解決するのも、医師や看護師の役割だ」。
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・日本ベーリンガーインゲルハイム株式会社 プレスリリース