厚労省は同日、「緊急承認制度における承認審査の考え方」に関する通知を都道府県に発出した。緊急薬事承認制度は、パンデミック発生など緊急時において安全性の確認を前提に、医薬品等の有効性が推定された時に条件・期限付き承認を与える薬事承認の仕組み。通常国会での審議では、あいまいな“有効性の推定”の解釈をめぐり様々な意見が上がっていた。
厚労省は、有効性が推定されるために必要となる臨床試験成績の具体的な内容について、基本的には個々の医薬品の性質に応じて判断されるとした。感染症に用いる治療薬については、探索的臨床試験において臨床的意義が認められた評価指標で一定の有効性が示されている場合を想定し、原則として後期第II相試験程度の臨床試験が該当するとした。
対象医薬品が抗体医薬品であって外来因子をターゲットとする場合など、外国人の臨床試験成績から日本人の有効性・安全性を評価できる可能性があり、有効性の推定に際して日本人成績が必要でない場合もあり得ると例示している。
一方、ワクチンについても、海外で実施された検証的な大規模臨床試験で顕著な成績が得られていれば、従来の承認審査では求められていた日本人対象の臨床試験成績が必要でない場合があると明記。
ただ、有効性の評価では、発症予防効果を評価指標とした検証的臨床試験の実施が原則としており、中和抗体価を評価指標とする臨床試験結果に基づいた承認は想定されないとしている。
有効性を確認するために緊急承認後に提出が必要な資料については、探索的な臨床試験結果のみが提出されている治療薬の検証的臨床試験結果、海外臨床試験結果のみが提出されているワクチンの日本人を対象とした臨床試験結果などが想定されるとした。
ただし、医薬品承認後の検証的な臨床試験は被験者の組み入れが困難となり、実施可能性が低下する可能性があるため、緊急承認制度を利用する製造販売業者は、承認審査と並行して検証的な臨床試験を実施し、承認時点以降における新たな被験者の組み入れが最小限となる開発計画を策定するよう要求。第II相と第III相を連続的に実施する第II/III相試験といった試験デザインを採用するよう提案した。使用成績調査や患者レジストリなどリアルワールドデータを活用して有効性の確認を行う方法を検討できる場合もあるとした。